今朝登場するのは、陸上の実業団、住友電工の陸上競技部で監督をされています、渡辺康幸さんです。渡辺監督といえば、箱根駅伝で長く早稲田大学の監督をされていました。その印象が強い方も多いのではないでしょうか?ですが、現在はマラソン選手を指導されているんです。まずは、なぜマラソンを指導することになったのか、伺いました。
「私は箱根駅伝で選手として活躍しましたが、実業団に行ってマラソンで成功できませんでした。自分の夢を叶えられなかった...。なので、東京オリンピックもきたことですし、自分の教え子を育てて、マラソンで成功させたいと思いました。
世間の期待も含めて、今、日本のマラソン界が低迷期に入っています。まず、若くしてスタートラインに立つ選手が少なくなっています。それは、箱根駅伝の加熱という問題です。箱根駅伝が最終目標になっていて、その後にマラソンのスタートラインに立つのが、中々世界で通用しません。「よしやるぞ!」っていう選手が少なくなってしまっているのです。そのピンチをチャンスに変えるという意味で何とか結果を出したいと思ってます。」
女子のマラソンでは、高橋尚子さんや野口みずきさんが金メダルを獲得していますよね...確かに、男子の活躍も期待したいところです。こういった想いの中、選手の指導をされている渡辺監督ですが、42.195kmを走る男子マラソンです。 現在、男子マラソンの世界記録は、昨年9月にドイツ・ベルリンの大会でケニアの選手が出した、2時間2分57秒。 対する日本人の最高記録は 2002年10月に高岡寿成さんが出した2時間6分16秒です。この記録が13年更新されていないという現状なんです。 そんな中、今、世界で勝つためにはどんな力が必要で、渡辺さんのチームではどんなトレーニングをしているのでしょうか?
「まずはスピードの強化です。日本のマラソンが世界で通用していた時代は「スタミナ重視」で、スピードより、スタミナがあればマラソンでは成功していました。大体これは30年前くらいまでで、まだアフリカ勢が出てきていないときです。ケニアやエチオピア勢が出て来るようになって、スピードに拍車がかかっていって...まぁ、ケニアとかエチオピアとかトップの選手はもう1時間台狙ってるんです。うちのチームが今やっていることは、低酸素(室)。標高の高い高地民族に勝つために、高地トレーニングを365日ずっと居続けるのって不可能。だから部屋を低酸素にして生活をさせて、平地での練習のパフォーマンスを上げるというやり方をしています。このトレーニングをしているチームは日本ではありません。」
よくスポーツ選手が海外の標高が高いところで練習をすることで、心肺機能や持久力を高めるトレーニング、行っていますよね。それを、もう自宅の部屋自体を低酸素にして、そこで生活してしまおう!...ということなんですね。陸上でこれを取り入れるのは渡辺さんのチームが初だそうです。さぁ、最後に、マラソンにかける渡辺監督の目標はなんでしょうか?
「オリンピックで一人代表を出したいと思っています。私が選手の時は、スピードタイプで、走りがどちらかというと上に跳ねるというか、マラソン向きではないとずっと言われてきたんです。でもそれはあまり根拠はなくて、あとは性格の問題や精神的な問題とも言われてたんです。データ的にもそういった選手がマラソンで成功していないというのは実際ありました。
でもそういう選手達が世界で戦って成功したら面白いんじゃないかなと思ってます。そういう成功例を一個をつくりたいんです!精神論とか根性論とか我慢強い選手でないと成功しないと言われているんで、それがちょっと悔しい...。 長期的ビジョンで、東京で成功する為に、一年一年やっていきますね。」
これまで 「常識」 と言われてきた事を打ち破り、新たなるスタイルで世界で戦える日本人選手を育てようという渡辺監督のチャレンジ、是非、応援しましょう!
