このコーナー、きょうが最後になります。ラストのFeature Focusは、私、ジョン・カビラの青春のサウンド、ファンクソウル・ユニット、「Tower of power」のインタビューをお届けします。

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今週末には、「BLUE NOTE JAZZ FESTIVAL IN JAPAN 2025」に出演予定のTOWER OF POWERですが、リーダーのエミリオ・カスティーヨさん、そして、リードボーカルのジョーダン・ジョンさんにお話を伺いました。

まずは、結成から57年、バンドを続けてこられた秘訣、その原動力について伺いました。

もうそれは、神のお導き、ってやつだね。僕は、そのレールに乗っただけさ。なぜなら僕たちのキャリアの初めの20年、僕たちは人間が知り得る限りのあらゆる過ちを犯したからね。でもそこで神の啓示とでも言おうか、バンドみんなで祈ることを始めたよ。

そして、もう一つは、僕たちは、トレンドを追わなかった。他の誰かになろうとしなかったことだね。何があっても、Tower of Powerのサウンドを守らなきゃって、ずっと初期からわかってたんだ。でも、それが呪いのように思える時もあった。

本当はもっと違う音にするべきなのかも、と思ったりね。でも最終的に僕たちは気づいたんだ。いや、これはもう神の思し召しなんだって。僕たちの個性、僕らならではの声ってね。だから何をやろうとも、僕たちはTower of Powerのサウンドになるんだよ。

唯一無二のサウンドを守り続けて、57年。宇宙最強のファンクユニットと言われるTOWER OF POWERですが、「ソウルミュージックの魅力」そして「ソウルとファンクの違い」について、エミリオさんに伺いました。

ソウルミュージックっていうのは、人を感情的に、肉体的に、そして精神的に揺さぶる、動かす音楽なんだ。Tower of Powerのライブに来たら、帰りは汗ぐっしょりで、かなりハードな運動をしたような気分になるはずだよ。感動的な体験で、それがソウルミュージックなんだ。心が揺さぶられて、自然と踊りだしたくなる。そして何か大きな力に導かれていく、つながっていく感覚だね。

そして、ファンクミュージックというのはソウルミュージックの一部分で、僕たちが得意とするところなんだけど、でも僕は、TOWER OF POWERは、ソウルバンドだと思ってる。なぜなら僕たちはファンクを演奏するだけでなく、美しく心を引き裂くようなバラードだってやるし、フィンガーポップやシャッフルの曲もある、ミディアムテンポのラブソングだってね。

それ全てがソウルミュージックなんだ。そしてその偉大なソウルミュージックの要の一つはシンガーだと思う。そしてジョーダンはその役割を完璧に果たしているんだ。本当に素晴らしいと思うよ。

57年のバンドの歴史の中で、参加したメンバーは60人以上と言われていますが、TOWER OF POWERらしさを変えずに10人ものメンバーをまとめる秘訣について伺いました。

よく、在籍したメンバーの数を聞かれるんだけど、もう見当もつかないね。60人をはるかに超えているのは分かっているけど、もう何年も前に数えるのをやめたよ。そして僕のリーダーシップのスタイルは父から学んだんだ。父は常に「ボス」って感じだったけど、みんなが、親父のためにベストを尽くしたくなる。そんな人だった。

僕の周りには、本当に素晴らしいミュージシャンたちがいる。だからこそ、僕のショーではなく、Tower of Powerのショーであって、僕の仕事は、この連中全員のフィルターのような役割をして、彼らのアイデアを浮かび上がらせ、それを表に出す手助けをすることなんだ。僕たち全員が、毎晩、音楽をより良くしようと努力している。僕たちは常に音に向き合って、削り取って、さらに完璧にしようと努力しているんだ。

そして、一番好きな曲について伺ったところ・・・

毎晩演奏するわけじゃないけど、かなり頻繁に演奏するのが「Only So Much Oil in the Ground」という曲。この曲を書いたとき、絶対に大ヒットになると感じたんだ。マネージャーに言ったのを覚えてるよ。この曲は最大のヒットになるって。

最高のホーンパートとイントロがあり、最高のボーカル、最高の歌詞、最高のリズムセクション、最高のテナーソロ、最高のオルガンソロ、最後のバックグラウンドシンギングがある。僕はこの曲がいかに素晴らしいか、絶賛してたんだ。でも実際には、チャートインすらしなかったよ。でも僕たちは何年も何年もこの曲を演奏してきて、曲のメッセージも年々時代にあってきてると思う。この曲を演奏する時は、みんな自然に走り出した機関車みたいに、進んでいくんだ。演奏していて本当に楽しいよ。

そして、今回一緒にインタビューに参加してくれたリードヴォーカルのジョーダン・ジョンさん。彼は、2024年からこのバンドに参加されているんですが、どんなきっかけで加入が決まったんでしょうか?

実は、オンライン公募を見て、応募したというジョーダンさん。世界的に有名なバンドで、わざわざSNSなんかで募集する必要はないはずなのに、今回は、なかなかいい人が見つからなくて、エミリオさんの発案で、SNSで公募してみようということになったそう。ジョーダンさん曰く、その募集ページを見たときに「これ、フェイク?嘘だろ?」って信じられなかった。本物か確認するためにってメッセージを送ってみたんだけど、本物だって返事が来て、Tower of Powerの元リードシンガーの一人エリス・ホールも確認してくれた。それで、応募したんだ、そしたら、エミリオが僕の携帯電話に電話してきて、数日後にサウンドチェックに来ないか」って誘ってくれたんだ。僕は、いつもTower of Powerの大ファンだったから、本当にドキドキだったよ。サウンドチェックでは歌うこと以上のことは何も考えていなかった。そして、エミリオが「おめでとう、採用だ」と言った時は全く信じられなかったよ。これは僕の人生で最高の日だと思った。」

と当時を振り返ってくださいました。実は、ジョーダンさんのお父様も素晴らしいミュージシャンで、アリス・クーパー、ジョージ・クリントンなどとも共演されているベーシスト。

エミリオさんも昔からよく知っているそうで、「え?彼の息子なの?」と驚かれたそう。そんな新加入のジョーダンさんにも愛情たっぷりで、しっかりサポートしながら、一緒に新たな道を進んでいるTOWER OF POWER.ジョーダンさんは、この大役を重荷に感じたことはなかったのでしょうか?

本当に多くの素晴らしい先人たちがいるからね、皆、僕が若い頃に尊敬したアイドルで、研究したシンガーたちなんだ。だから大変だよ。でもエミリオが教えてくれたのは、彼らはただ歌が上手いだけじゃなくて、その歌には、素晴らしい深みがある。特定のスタイルだけじゃなく、美しいバラードも歌うし、ハードで魂を引き裂くようなソウルも歌うし、人々を立ち上がらせ叫ばせることができる。たとえ電話帳の内容を歌っても美しい音楽にできるくらいなんだ。それはすべてのジャンル、すべてのスタイル、すべての人々を超越している。そしてTower of Powerのすごいところは、世界中、どこで演奏しても、音楽が世代を超越し、人種を超越し、あらゆる種類のジャンルの音楽を愛する人々を超越することなんだ。

ステージから観客席を見渡すと、素晴らしい光景が見えるんだよ。1968年の最初から追いかけてくれている人々もいるし、ヘッドフォンをつけた小さな子供たちが父親や祖父の肩の上に座って、拳を突き上げて音楽を楽しんでたりする。これがソウルミュージックを演奏することで、皆と共有できる特権の一つだと思ってる。まさに時代を、世代を超越した体験なんだ。彼らが長い間をかけて人々の心に届けてきたもの、方法を見つけられるよう日々、努力している。

ファンクソウル・ユニット「TOWER OF POWER」のインタビュー、リーダーのエミリオ・カスティーヨさん、リードヴォーカルのジョーダン・ジョンさんに事前にお話を伺った模様をお届けしました。

実は、元々は、カバーバンドだったというTOWER OF POWER、立ち上げメンバーでもあるドック・クプカさんにせっかくこんなにいい演奏ができるんだから、 オリジナルの曲をやろう!と促され、「You are still a young man」などの名曲が生まれることに。

*初来日は、51年前の1974年11月28日(中野サンプラザ)という TOWER OF POWERですが、エミリオさんは、 一昨日、24日に75歳を迎えられ、現在も現役バリバリ!!今回のインタビューでは、色々破天荒な思い出も教えていただきました。

28日には、「BLUE NOTE JAZZ FESTIVAL IN JAPAN 2025 そして29日には、 Cotton clubでライブを行う予定となっています。 詳細は公式サイトをチェック!

TOWER OF POWER

Blue Note