昨年は、「2024年問題」とも言われ、トラック輸送を中心とする日本の物流のあり方を見直す転換期となった日本。物流危機は何とか回避された感がありますが、昨日も、国土交通省が来年度の予算概算要求案で、自動運転トラックの幹線輸送実証に40倍の予算を決定したりと新たなアプローチも見られています。
そこで、今朝は、アメリカの物流事情にフォーカス!
アメリカでトラックを所有するオーナーオペレーターとして活躍されているPUNKさんにお話を伺います。
PUNKさんは、ご自身でトラックを所有され、当然そのトラックの運転もしながらインターステート(州間高速道路)を介して全米に荷物を届けているということですが、このトラックの大きさはどのぐらいの大きさですか?
日本で言う、いわゆる寝台付きのトラックです。トラクターが三軸、トレーラーが二軸で合計で五軸なんですが、タイヤの数は18本あります。繋げると全長72フィート(約22m)、幅が8.5フィート(約2.6m)、高さが13.5フィート(約4.1m)です。
1995年に初渡米で初めてアメリカのトラックに乗った時の写真
*トラックドライバーとして、どれくらいの距離を走られるのでしょうか?
日本でも同じだと思うんですけど、アメリカにも近距離、中距離、長距離を走る運転手がいます。私の場合はどんな荷物も運ぶので、積んだ荷物にもよるんですけれども、例えば長距離の場合、アメリカ大陸を東から西、西から東へ横断すると、距離にすると3000マイル以上、キロに直すと4828キロを4、5日かけて配達するという感じですね。

*荷降ろしは、国によって規制があって「ドライバーは基本的に荷下ろしをしません」ということがありますが、アメリカはどうなっていますか?
日本は多分ドライバーがやっていると思うんですよね。でもアメリカは、長距離運転手に関しては基本的にノータッチです。もし何か作業中に怪我をしたとか、そういう保険の関係とか責任とか色々あるので・・・
*PUNKさんがアメリカでトラックドライバーをされるようになった経緯とは?
1980年代から90年代にかけて日本でキャリアカーに乗っていたんですけど、毎日の渋滞に嫌気がさして空を見上げた時に、一機のヘリコプターがスイスイと飛んで行って、「空には渋滞がないんだな、飛んでみたいな」と思ったのがきっかけでアメリカに来ました。自家用のヘリコプター免許を取った後に、事業用の免許を取るために訓練していたんですけれども、やはり働いていないので金銭的に苦しくなって生活するために再びトラックに乗ることになったのがきっかけで現在に至っています。
*営業用のトラック免許を取ってもトラックを所有されていないということになると、運輸会社に就職するという形でドライバーのキャリアが始まるわけですか?
私の場合は、普通の運送会社に入っては辞め、をかなり繰り返して、結局2017年に自分の会社を自分で立てて、それでトラックを購入してやっています。
*働き方改革ということで、日本で言うところの「2024年問題」という一つの課題がありますが、アメリカではどういうルールがあるんですか?
アメリカでは基本的に1日に運転できる時間は11時間です。待ち時間とか荷降ろしの時間とか、そういうのを全部含めて最大14時間ですね。
私がやっているのは「Over the Road」っていう長距離輸送のことなんですけども、8日間で70時間を超えてはいけないという法規がありまして、また70時間の(労働可能)時間が戻ってくるためには、34時間のお休みをしなければいけないという決まりがあります。
そのお休みは取れるし、あと14時間(労働した)1日の後、10時間の休憩を取らなければいけないというルールもあるので、10時間あればゆっくり寝ることもできます。毎日毎日最大まで走るわけではないので、慣れちゃえば、大丈夫。
先週ジョージア州アトランタの倉庫近辺で一泊
s*そういうルール・・・しっかり守っていますよという証明をしなければならない仕組みは、どういう風にモニタリングされているんですか?
アメリカでは2017年12月に、ELDという、日本で言うデジタコのような電子記録を付ける義務化が正式に始まりました。その前まではペーパーログといって手書きで記録を書いていたんですけど、手書きとなると、みんなやっぱりごまかすんですよね。それで労働時間をごまかして過重労働になり、事故や過労死になるケースが増えたために、米国運輸省連邦自動車安全局が規制を行いました。その後は一層厳しくなったので、ごまかすような話は聞かなくなりました。
*査察に入られたことはありますか?
ロードサイドインスペクションとか、現場でチェックが入ることもあります。止められて、抜き打ち検査じゃないんですけど。あと州によって、州間高速道路とかを走っている時にウェイトステーションという重量を量る場所がいっぱいあって、そこで違法積載をチェックするわけですけれども、そこでもたまにインスペクションがあって、その時に調べられます。
*そして、今、トラックの牽引するキャブの中のアメニティのレベルが、かなり上がっているという噂も聞いているんですがパンクさんのトラックは?
今の(トラック)は2023年式ですが、基本的に1ヶ月、2ヶ月は家に帰れないので、もう家のようなものですね。数年前から電子レンジとか冷蔵庫も付いているので、スーパーに行って食材を買えるようになりました。それなしではちょっと辛いかもしれません。~かもしれません」

ターキー牧場の会社で働いてた時ドロドロになるので長靴を履いていた
アメリカでトラックを所有するオーナーオペレーターとして活躍されているPUNKさんにお話を伺いました。
女性で、しかもアジア系・・・かなり珍しいようですが、 最近、日本人女性ドライバー2人と知り合ったそう。
アメリカを横断するようなハードなお仕事ながら、辛いと思うことはない!というPUNKさん。「この仕事の醍醐味は、全米の素晴らしい景色に出会えること」、「仕事をしながら旅している気分を味わえる」、と 明るくお話くださいました。
そして、今後については、できる限り、この長距離ドライバーという仕事を続けていきたい、ということでした。
リスナーの皆さんの中にも、トラックドライバーさんもいらっしゃるかもしれませんが、お仕事いかがですか?
私たちの生活を支える物流の世界、活躍されているドライバーさんたち、本当にお疲れ様です。そして、物流サービスにお世話になっている皆さんも、ぜひ思うところ、Xやメッセージで教えてください。