世界で最も有名な交差点として知られるスクランブル交差点など、東京の「顔」の一つとも言える「渋谷」。100年に一度の大規模再開発も進行中ですが、その再開発において「デザイン会議」の座長を務め、長年に渡って深く関わってこられたのが、建築家の内藤廣さんです。
今週と来週は、内藤廣さんのインタビューを、お届けします。今朝は、現在この街で開催中の展覧会について、また、数々のランドマーク、名建築を設計されてきた内藤さんが「渋谷」の街にかける想いについて伺いました。

JK:長年にわたり日本の建築界を牽引されてきた内藤寛さん。数々の博物館、美術館や高田松原津波復興記念公園、そして、この近くですと、とらや本店も・・・六本木にあったレコードショップ「WAVE」の名付け親でもあったとか・・・
名前をどうしようかって色々やっている時に、「WAVE」は、「We」の間に「AV」があるのが良い、ということで、決まったんです。私たちの間にオーディオビジュアルがある、という読み解き方ができるって。あれは、堤さん肝いりで全く新しい業態を作ろうという試みで、かなりディスカッションして作った建物で面白かったですね・・・
そして、今回の展覧会「建築家・内藤廣 赤鬼と青鬼の場外乱闘 in 渋谷」展「赤鬼」と「青鬼」というユニークな視点でご自身の作品を紐解くという展示ですが、この「赤鬼」と「青鬼」とは?
内藤さん:鬼って多分誰もが持ってると思うんですよ、まじめくさった青鬼と、崩してやろうという赤鬼が住んでいるはずで。で私の頭の中にも当然二匹の鬼がいて、建物を作るときはそいつらが格闘しながら建物を作っていくわけですね。それをこう分けてみたら意外と面白い会話が成り立つということがわかって2人をこう会話させるといろんな心の中で思ってたことが見やすくなるんです。なので、展覧会をやるなら真面目な展覧会をやってもしょうがないし、渋谷でやるんだったらそのぐらいやらないと面白くないと思って。
JK:現代の日本では、赤鬼と青鬼、どちらが優っていると思われますか?
内藤さん:ちょっと日本の赤鬼は弱くなってるかもしれませんね。管理型の社会になってきて青鬼の力の方が強くなりつつあるのかもしれないですね、でもそういうものをブレイクスルーしていく発想や自由さとか意欲とかには赤鬼の役割があると思います。
JK:2006年から渋谷駅周辺のデザイン会議座長を務められ、まちづくりに深く関わっていらっしゃいますが、この再開発、「100年に一度」とも言われていますが、どんな想いで手がけていらっしゃいますか?
内藤さん:よく百年に一度って言われるんですけど、千年に一度じゃないかと思ってるんですね。もう今の渋谷の再開発みたいなものは、これから世界的にも不可能、おそらくこんなことは二度と起きないんじゃないかなと思ってます。
そして、(この開発で)基本的には渋谷のDNAみたいなものがなくなっちゃうといくら立派な街ができてもしょうがないと思っていて、渋谷が培ってきリソースを生かして街づくりをしなきゃいけないと思ってやっています。
JK:渋谷の「DNA」とは?
内藤さん:ある種の多様性というか、いろんな人を受け入れるような、僕はビオトープみたいな街だって言ってるんですけど、いろんな植物がいろんな形で生きて、生き生きとしている・・・そういう場所ができたらいいなと思っています。
そこでいろんな文化が花開いて・・・というふうにならないと、いくら立派な超高層がボンボン立ってもしょうがないなと。
JK:そんな中で、経済的な整合性、利益を上げなければならないといった葛藤もありますか?
内藤さん:ものすごくありますね、最初は皆さん、帳尻を合わせようとするわけですが、やっぱり大事なのは、そこに集まってくる若い人や年配の方だとかそういう人たちの目線から街をどういう風にしたらいいかを考えましょうとやってきました。最初は理解できなくてもだんだんみんな理解してくれるようになって・・・最初は疑心暗鬼だった商店街の皆さんもサポーターになってくれています。
JK:この渋谷の一大プロジェクトで内藤先生が心を砕かれたのは「人が行き交う場所」?
内藤さん:はい、再開発というと超高層を立てて真ん中にエレベーターを作って・・・でもそれだと人が街に出ない。なのでできるだけ乗り換え動線は町側に引っ張り出すようにして、「アーバンコア」と名前を付けて、必ずそれを設けないとダメですよというルールを作りました。これが出来れば、世界で見たことのない、人が生き生きと歩いて集まってくるような場所になると思います

100年に一度ではなく、「1000年に一度」の渋谷再開発。東京メトロ銀座線・渋谷駅の設計も手がけた内藤さんのお話から未来の渋谷の風景、楽しみになります。
そんな内藤さんの展覧会「建築家・内藤廣 赤鬼と青鬼の場外乱闘 in 渋谷」は、渋谷ストリームホールで開催中です。
皆さんは、「渋谷」というと、どんなイメージですか?どんな思い出がありますか?最終段階に入ったという渋谷の再開発について思われること、などぜひ、Xやメッセージでお寄せください。
建築家の内藤廣さん、来週も、未来の東京、世界の街のあり方など更にお話伺います