今年は終戦から80年。第二次世界大戦にまつわるさまざまな映画が製作されていますが、今日から公開となる映画が、堤真一さん、山田裕貴さん主演の「木の上の軍隊」。

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これまであまり描かれることがなかった沖縄戦を扱ったこの作品ですが、今朝は、監督、脚本を手がけた平一紘さんに事前にお話を伺った模様をお届けします。

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*平さんが監督・脚本を務められた作品「木の上の軍隊」拝見させていただきました!物語は沖縄伊江島です。 これは本島から9キロほど離れている伊江島に宮崎から派兵された上官と地元出身の若い兵士が、アメリカ軍の攻撃を逃れるため、ガジュマルの木の上に登って、終戦を知らずに2年間、木の上で過ごしたという実話をもとにしたものなんですが、井上ひさしさんが、メモに書き残した原案から生まれたストーリーで舞台化されているものなんですよね。

はい、初演はもうかなり前なんですけれども。 藤原竜也さん、そして山西惇さんが演じた上官と新兵の「木の上の軍隊」という舞台がありまして、その後、松下洸平さんと山西さんで再演されたんですが、本当に素晴らしい舞台で、それが原作になっている映画です。

*当初、オファーを受けるか、悩まれていたそうですが、沖縄の制作チームの総力戦という感じですね?

この作品を受けたのが、今から2年前で僕33歳だったんですけれども、沖縄戦を背景にした作品を、沖縄の監督やチームが撮ることって、多分今までなかったんですね。 そういうこともあって、僕、実はすごく不安だったんですよ。 この作品を受けるのが僕でいいのかと。僕はその当時33年間、一度もですね、多分、沖縄戦についてちゃんと向き合ってきたことがなかったんですね。 沖縄戦で亡くなった人のこととかを全然自分ごとにできてなかったので、こんな僕が映画にしていいのかなという思いが強くありました。ただその受けた後にこの舞台の映像を見た時にですね、沖縄戦をこの悲しく描いたりとか、沖縄戦をこのいわゆる戦争として描いてる物語ではなくて、2人の人間の生きるという望みに賭けた人間ドラマだというふうに思って、それがしかも非常にユーモラスに描かれていて、これだったら、僕が今からこの立ち向かったとしても、この映画は面白くできるんじゃないかなと思って、受けるに至ったんですね。 そして、それは沖縄の他のスタッフも一緒で、みんなやっぱり沖縄戦の映画ってなると、ちょっと二の足を踏んだんですけれども、やっぱり物語を知ると、これはいけそうだね、 僕らでやれそうだねっていうことで、おっしゃる通り、総力戦で挑みました。

*とても年上の上官と新兵の関係がユーモラスですよね?

僕自身もコメディーとかユーモアっていうのは好きで、作品によく取り入れてるんですけれども、あの先ほど言ったように、僕が沖縄戦と向き合ってこなかったっていうのが、実はあって、あんまり沖縄で、あの僕が今まで見てきたものだったり、そういうコンテンツがですね、戦争を描いたものっていうのはとても辛くて苦しくて、もうちょっと見てられないものばかりだったんですよ。 なので、僕はそれから目を背け続けてきたんですけれども。 なんかそういうのを見れない人たちにこの作品を届けるためには、どうしたらいいんだろうって思ってたんですね。なので、今回、僕もせっかく井上ひさしさん原案の「木の上の軍隊」という作品は、本当にユーモラスに舞台版でも描かれてたので、この空気感をどうやったら映画にできるかなというのいろいろ工夫して、それがあの2人の俳優の手によって、さらにユーモラスに評価されて、映画にできたんじゃないかなというふうに思ってます。

*役作りに関してはどんな対話があったんでしょうか?

実は、2人の間柄が木の上にいるから、なんとなく仲良くなってとか、なんとなく打ち解けてっていうことは、絶対ありえないなと思ったんです。 なぜならこの2人の間は、ただの年上年下の関係じゃなくて、軍隊という、絶対に不可侵な掟がある。絶対に逆らえない、今の僕らの価値観ではわからないぐらいの戒律、縦社会があるなと思ってて、これが逆に僕は面白いなって思ったんですね。 はい。 ただ、あの長く過ごしていくうちに、その関係性の変化ってどうなっていくんだろうというふうに思っていて。 実はほぼ順撮り、頭から、映画の終わりの方まで順番に撮ってっていきました。それで2人の気持ちが流れるままに演じていただいた、というのがあります。

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*敗戦から80年ということですが、どういった思い、次の世代の皆さん、もしくはこの映画を見てほしいと思う皆さんにどんな言葉をかけたいですか?

知るということがとても大事だと思っていて、その知るというのは悲しみや苦しみ、そして過ちの歴史を知るだけじゃなくて、この映画で僕が、提示しているのが戦争によって変えられてしまうというものが何なのかということを僕は考えたんですね。 僕らは戦争を知らないし、ただ、戦争が起こった後の価値観で僕は生まれていて・・・ なので、戦争が起こった後の価値観っていうのは、もう変わることがないし、だからこそ絶対に起こしてはいけない。 映画の中で、戦争が終わってないと思って生きてきた2年間、ある意味パラレルワールドで生きてきた中で、木から降りてきた時に「前よりはマシだよ」っておじいが言うセリフがあるんですが、本当にさまざまな価値観の変化が起きている沖縄に直面するわけですよね。 そういったものっていうのは、もう二度と変わらない、自分が米兵を殺した場所になってしまったこの島は、もう二度と僕の帰る場所ではないって思ってしまうような感じで。 なので、戦争が起きてしまう前にはもう二度と戻れないというのが、恐ろしいことだなとも思うので、やはり二度と起こしてはいけないというのを、映像で見せたいなと思いました。

今朝は、今日から全国公開となる映画「木の上の軍隊」を手がけた、平一紘監督にお話を伺いました。

実話を元にしたお話。監督も実際にこの物語のモデルになった方々の家族に取材をして脚本を作り上げていったということですが、実は、終戦を知らずに洞窟などに隠れていた方、沖縄では、他にもいらっしゃったそうです。そして、今回のロケが行われた木ですが、 伊江島に実際に植えられて、現在も見学可能だそうです。

沖縄ではひと足先に公開となっていますが、今日から全国公開となる映画「木の上の軍隊」。ぜひ劇場に足を運んでみてください。

そして、終戦から80年の今年、皆さんがこの戦争について学んだもの、向き合ったこと、教えてください。

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