音楽フェスのシーズン、始まっていますが、皆さんが聴かれるのは何ですか?ロック?ポップス?もしくはジャズ?今日は、名門ジャズレーベル、ブルーノート・レコードの社長兼プロデューサードン・ウォズさんをお迎えしてお話を伺った模様をお届けします。

1939年にベルリンからニューヨークにやってきた二人のドイツ人によって設立されたブルーノート。当時、虐げられてきたブラックアメリカンたちの魂の叫びとも言える音楽、ジャズを広めたいと、立ち上がったレーベルなんですが、ご自身もベーシストであり、プロデューサーとしても数々のレジェンドたちの作品に参加。グラミー賞を6回受賞というドン・ウォズさんが、そんなブルーノートの社長に就任したのが2012年のこと。
輝かしいキャリアの中で、なぜ社長業を引き受けることになったか・・・まずはそんなところからお話を伺いました。
当初、僕の人生の目標は、ただ「仕事を持たない」ことだったんだ。仕事に行かなければならない、という状況が嫌でね。僕はベーシストで、音楽を演奏することは、仕事だと考えたことがなかったし、レコードをプロデュースすることも「仕事」だと思ったことはなかった。でも、レコード会社を経営することは、まさしく「仕事」なわけで。そんな僕が、経営に関わる・・・どうやって会社を経営し、同時に自分らしくいられるか、その方法を見つけ出すのに5年かかったよ。前任者のブルース・ランドヴァルは、史上最も愛されたレコード会社の重役の一人だったけれど、彼を丸々真似するわけにはいかないし・・・でも、驚くことに僕たち9月13日という同じ誕生日で、「これは運命だ」と感じたんだよね。
以前の僕にとって、レコード会社は、スタジオに現れて何をすべきか指示を出して、アイデアを押し付け、お金を持っていっちゃう・・・そういう人たちだと思っていた。
でも、実際にレコード会社で働き始めて、「待てよ、ここには悪いやつなんていないじゃないか」と思ったんだ。そこにいたのは、音楽を愛し、会ったこともないミュージシャンのために夜11時まで働くことも厭わない若者たちで、彼らはただ、素晴らしい音楽を人々に届けたいという使命感に燃えているんだよ。だから、今では、私たちがリリースしたレコード、契約したミュージシャン、そして会社で働く全ての人々を誇りに思っているよ。
ミュージシャンであり、経営者という二足の草鞋でジャズシーンを牽引するDon Wasさん、彼のジャズとの出会いについても伺いました。
それは車のラジオから流れてきたんだ。というのも当時14歳だった僕はとにかく言うことを聞かない子でね、だから母は、僕が勝手に友達と遊びに行っちゃわないように、どこに行くにも一緒に連れていって、車の中に待たせてた。ふてくされた僕は、ラジオのダイヤルをいじっていて・・・そのときたまたま耳にしたのが、ジョー・ヘンダーソンの『Mode for Joe』という曲だった。僕がちょうどチューニングを合わせたその瞬間、まるで心の叫びのような、苦しみに満ちたサックスの音が流れてきたんだ・・・・
Don Wasさんの人生を変えた一曲、ジョー・ヘンダーソン『Mode for Joe』でした。
このMode for Joeという曲は、「これこそが今の自分の気持ちそのままだ」と思ったんだ。曲が始まって46秒あたり、ドラムのジョー・チェンバースが入ってきてスウィングし出すんだよ。それに合わせて、ジョー・ヘンダーソンも次第に嘆きのような演奏をやめて、スウィングし始めるんだ。そこで僕が音楽から受け取ったメッセージは、「ドン、逆境にあってもグルーヴを忘れるな」ってことだった。いや、本当に、曲が終わる頃には、僕の気分は180度変わって、母親が戻ってきたときには、ちゃんとしたいい子になってたんだ。
しかも、その変化をもたらしたのが、歌詞のない音楽だったってこと。メッセージは確かに伝わってきたんだよね。音楽の持つ力、人を変える力に、心から感動したよ。
それで、そのレコードを買ったんだ。1966年のことだね。FMラジオなんて持ってなかったから、家で聴くためにラジオも買った。それから気づいたんだけど、自分が好きな音楽の多くが、ニューヨークにある「ブルーノート・レコード」という小さなレーベルから出ていたんだ。
14歳の僕には、それがこの世で一番クールな世界に見えたんだ。そしてそれから45年後、まさか自分がブルーノート・レコードの社長になるとはね
まさに運命的な出会いだったジャズとの出会い。ですが、ジャズというと、ちょっと敷居が高い、と思われる方、多いんじゃないでしょうか?そこで、Donさんにジャズの楽しみ方についても伺いました。
多くの人がジャズに対して恐れを抱いているよね、たとえば「音楽理論を3年勉強しないと楽しめないんじゃないか」とか、「インテリすぎて自分には無理だ」とかね。
でも、そんなことはないんだ。ただ、リラックスして音に身を任せて、それが自分にとって心地よく感じられれば、それでいい。
もし一つの曲が好きじゃなければ、別のレコードを聴けばいい。必ず「これは自分に響く」と思えるものに出会えるはずだから。パーティーに行ったときみたいなもんだよ。いろんなグループがそれぞれ会話していて、あるグループの会話には興味が湧かないかもしれない。でも、歩き回っていれば、きっと自分の心をつかむ話をしているグループが見つかるでしょ。
特にジャズのミュージシャンたちは、お互いの演奏を聴き合い、反応し合って演奏してる、それは会話なんだ。言葉を使わない会話。だから、誰にでもきっと自分に語りかけてくるジャズが見つかると思う。
私がブルーノートで働き始めたころ、市場調査をやったんだけど、「ジャズって好きですか?」って聞くと「いや、ジャズは嫌い。頭でっかちで、自分向きじゃない」って言うんだよね、
でもそこで、リー・モーガンの『ザ・サイドワインダー』をかけると、みんな「うわっ、これ最高!なんていう音楽?」って聞いてくる。「これがジャズですよ」って言うと、「えっ、そうなの? だったらジャズも悪くないかも」ってなる。
だから、ちょっとでも耳を傾けてみれば、ジャズは素晴らしい友だちになると思うよ。
今朝は、名門ジャズレーベル、ブルーノート・レコードの社長兼プロデューサードン・ウォズさんにお話を伺いました。Donさんとは、グラミーでお会いして以来!そんなDonさんが手がけるブルーノート・レコードのアーティストたちの来日も次々予定されています。
- 7/25(金)フジロックに マヤ・デライラ
- ・9/27(土)ブルーノートジャズフェスティバルにノラ・ジョーンズ出演
そして10月には、ユニバーサルミュージックからリリースされるCD、Everything Jazzにも、ブルーノート編として50作品が収録予定。こちらは10月22日 リリース予定です。
ドン・ウォズさんが教えてくれたジャズの魅力、いかがでしたか?皆さんはジャズというと、どんなイメージですか?皆さんのお好きなジャズの曲なども、Xやメッセージで、ぜひ教えてください。