ロシアによるウクライナ侵攻が3年を超え、現在、停戦協議に向けた動きがみられる中、ウクライナから平和を訴える美しい旋律を奏でてきた一人のヴァイオリニストが、来日。今月、サントリーホールで行われる、東北ユースオーケストラの演奏会に参加します。
今朝は、こちらに出演される、イリア・ボンダレンコさんのインタビューをお届けします。イリアさんは、2001年生まれの若きウクライナのヴァイオリニストであり、作曲家。
2018年の韓国冬季オリンピック、2018年アルゼンチンでの夏季ユース五輪、そして2016年のアメリカのホワイトハウスでの演奏をはじめ、世界の様々な賞を受賞、2023年には、ウクライナのキーウ音楽院にて作曲の学士号を修得されて現在はロンドンのRoyal College of Musicにて学んでいるという、世界から注目を集めるヴァイオリニストです。
実は日本とは縁が深いというイリアさん、そのご縁の一つが、故・坂本龍一さんとのコラボレーション。坂本龍一さんがイリアさんのために作曲した曲「piece for Illia」をウクライナの廃墟で演奏、その様子をアップしたYouTubeが世界から注目を集めました。そこで、まずは坂本龍一さんとの出会いについて伺ったところ、
「ロシアのウクライナ侵攻が始まった際、イギリスのヴァイオリニスト、カレンザ・ピカードさんから「世界中のヴァイオリニストがウクライナの民謡を演奏する動画を作る」という企画への参加を打診されたんです。
そこで、ウクライナの民謡を編曲して、祖母が防空壕で撮影してくれた動画を送りました。その動画は、他の多くのヴァイオリニストの演奏と組み合わされて「ウクライナ・フラッシュモブ」という形で、世界に配信されたわけです。
その動画を見た坂本龍一さんが、Instagramを通じて直接連絡をくれたんです。そして、僕に「ウクライナの現状を反映した楽曲を作りたい」と提案してくれて、「Piece for Ilya」という作品が出来上がりました。」
そうして、出来上がった楽曲のミュージックビデオを撮影する場所として、イリアさんが選んだのは、ロシア軍によって破壊されたウクライナの小学校でした。廃墟となった校舎の前で演奏することで、戦争の現実と、それでも消えない希望の光を表現したかったというイリアさん。その様子、現在もYouTubeで拝見できますが、崇高で美しいバイオリンの音色は圧巻です。
さて、そんなイリアさんにその演奏の際に感じていたこと、伺いました。
とにかく、最初に感じたのは、日本とウクライナという全く異なる文化的背景を持つ僕たちが同じ思いを共有できたということ。
日本にいた坂本さんが作ってくれた音楽には、まるで遠くにいる私たちを包み込むような力がありました。そして、その気持ちが演奏する僕の心の中で反響した感じなんです。
演奏の最中には、これまで僕が経験したこと、故郷への想いなどがこの曲を通じて溢れ出していきました。音楽を演奏する時、頭の中には一つの考えだけが巡るわけではなく、さまざまな思考が入り混じります。
そして、この音楽を聴いた人がどう感じたのかが重要なのだと思います。日本人もウクライナ人も、全く異なる文化、異なる歴史を持っていますが、それでも私たちはこの音楽を通じて、平和を願う同じ感情を共有した感じがしました。
とお話しくださいました。そんなイリアさん、実は、坂本さんとのご縁の前にも、日本との繋がりがあったそうなんです。
このプロジェクトは、高田賢三さんがスタートさせた、広島とチェルノブイリの犠牲者を支援するための慈善活動の一環で、2018年に広島から使節団が原爆を生き延びたヴァイオリンを持ってチェルノブイリに来られました。
その際に、僕にそのヴァイオリンを演奏してほしいという依頼を受け、チェルノブイリの記念博物館の洞窟で演奏したというご縁です。
このプロジェクトを通じて、僕も広島とチェルノブイリという二つの都市の歴史と、それに伴う悲劇的な状況について深く考えさせられたわけですが、同時に、いかに音楽が国境を越え、普遍的な言語であるかを知ることができ、このイベントで、多くの人たちと同じ思いを分かち合うことができました。
こんな日本との縁が深いイリアさんですが、今月、3月21日にサントリーホールで開催される、東北ユースオーケストラの演奏会に参加が決まっています。(坂本龍一さんが結成された東北ユースオーケストラについては、以前も番組で取り上げましたが)こちらのコンサートで楽しみにされていること、伺いました。
東北ユースオーケストラとのコンサートは、とにかく楽しみですね。
僕自身、これまで多くのユースオーケストラに参加してきましたが、素晴らしい経験になっています。そして、今回も若い音楽家たちの情熱あふれる眼差しに触れ、その中で演奏するのは、本当に素晴らしい経験になると思います。
また、このコンサートでは坂本龍一さんのレガシーを称える演奏が行われる予定なので、その点も楽しみですね。坂本さんが僕に授けてくれた音楽を受け継ぎ、演奏していくことは、僕にとっての責任でもあり、誇りでもあると思ってます。
さらに、日本の音楽家たちと音楽を作り上げていくのかも楽しみなところ。日本の音楽文化により深く触れたいと考えています。僕にとって、このコンサートは、日本との新たな繋がりのスタート。今後も日本での演奏を続けていければと思っています。
ということでした。では、最後にリスナーの皆さんへのメッセージもいただきました。
まず、日本の皆さんがウクライナを支援し続けてくれていることに心から感謝しています。昨年日本を訪れた際、日本の人々がどれほどウクライナの戦争に心を寄せてくれているかを実感しました。そして、何ができるか、どんな小さなことでもできる限りの支援をしようとしてくれているのを感じました。本当にそれを思うと、今でも胸が熱くなります。
そして、今月のコンサートで日本の皆さんとお会いできることを楽しみにしています。音楽は、時にはどんなものよりも心を癒す力を持っています。最高の薬なんです。ですので、ぜひ、お近くに来られる際には、コンサートにいらしてください。きっとご満足いただけると思いますよ。皆さんに素晴らしい音楽を届けられるよう、全力を尽くします。
とのことでした。イリアさん、ありがとうございました。
東北ユースオーケストラの演奏会にゲストとして出演されるウクライナのバイオリニスト、イリア・ボンダレンコさんのインタビューをお届けしました。イリアさんの奏でる美しい音色、3月21日、サントリーホール 大ホールで行われる 東北ユースオーケストラ演奏会2025 にて堪能していただけますよ!
チケット残りわずかのようです、詳しくは、東北ユースオーケストラのサイトをご覧ください。