ウクライナやガザ地区をはじめ、今なお世界では紛争が続いている地域があるわけですが、2011年のシリア危機以降、シリアから多くの人々が流入しているのが、ヨルダン。現在、およそ64万人のシリア難民がUNHCRに難民登録されているという状況で、その多くが、難民キャンプ外の都市部や郊外で避難生活を行っていると言われています。今日は、そんなヨルダンで活動を続ける「国境なき子どもたち」の派遣員大竹菜緒さんに、ヨルダンの状況、そしてこういった地域で育つ子供達について、お話を伺います。

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*現在、一時帰国中という大竹さん。ヨルダンでの活動はいつからですか?2021年の5月からヨルダンに在住し、5月で3年目となります。ヨルダンの状況、人々の生活はどんなか教えていただけますか?

66万人が難民として登録されていますが、その8割は自分たちで家を借りてヨルダン人だったりパレスチナ人だったりほかの国籍の人と混じって生活をし、2割は難民キャンプといったところに生活をしています。家賃を支払うのも大変だし、一方で、キャンプは無料ながらプレハブ小屋のようなもの・・・

*国境なき子どもたちはどんな活動をされているのでしょうか?

もともと1997年に日本で設立された団体で、国境を越えてすべての子どもに教育と友情をというビジョンを掲げて活動しています。これまで23万人以上のストリートチルドレンの子供達などに教育機会の提供をしてきました。ヨルダンでは2007年から活動しており、メインは紛争の影響下にある子供たちに音楽や演劇、図工などの情操教育の機会の提供や授業補習授業の実施などしてきました。現在はヨルダンの公立高校27校で日本で実施されている特別活動と言われるものをしております

*特別活動とは?

特別活動というのはホームルームや縦割り班活動など、日本の教育で取り入れられてきたもので目的として社会性を身につけるというところがあります。社会性や協調性を身につけたりコミュニケーション能力だったりそういったものを身につけるための活動になっています

*彼らにとって、なぜこの特別活動が重要なのでしょうか?

シリア紛争で多くの子どもたちがヨルダンに逃げてきた中で、子供達同士のいじめや差別などが見受けられました。その原因の一つでもあるのが、お互いをよく知らないことでした。また、学力偏重の傾向がかなりあり、先生たちも学校は知識を取得するところという感覚がかなり多く、集団行動を学ぶ機会がなかったため、こういった活動が重要になってくるわけです。

*直接子供達に指導するのではなく、インストラクターや教員を育てる形をとっている理由とは?

私たち団体がいなくなってもどうやって現地の人たちが自主的に継続できるかを考えていることが大きな理由になりますね。特別活動は継続性というのが大事になってくるんですね、ですのでどうやったら無理なく続けられるかにフォーカスしているところです

*特別活動を行う中で、子供達に変化は生まれていますか?

我々2018年から始めてきて、少しずつあの良い効果も出てきているかと思います。もともと人前で話すのが苦手だった子供が話せるようになったり、いじめが減ったり、いじめに気づくことができたり。先生側は、より生徒のことを知ることができるようになったという声もあります。

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「国境なき子どもたち」の派遣員、大竹菜緒さんにお話を伺いました。来年の4月まで実施されるというこの活動、インストラクターの増員、そして、教員たちのモチベーションを上げるための施策など、まだまだ大竹さんたちのチャレンジは続くようです。