今日、329日にリリースとなった、ビヨンセのニューアルバム「カウボーイ・カーター」。

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カウボーイの衣装を身にまとい馬に乗るビヨンセの姿が印象的なアルバムジャケットですが、2022年にリリースされたアルバム「ルネッサンス」の第二章と位置づけられたもの。その楽曲はカントリーミュージックとポップスを融合したサウンドで注目を集めています。

そこで、今朝は、ポピュラー音楽研究者で慶應義塾大学教授の大和田俊之先生と共にビヨンセがカントリーアルバムに取り組む意味、その背景など、掘り下げてみたいと思います。

まさに、本日リリースのビヨンセ8枚目のアルバム、「カウボーイ・カーター」。先行リリースされた「テキサス・ホールデム」は、全米ビルボードチャートで1位、そして、全米ビルボード・ホット・カントリー・ソングスチャートでも1位を獲得しています。(同時リリースの16 Carriagesもカントリーチャート1位)。

ビヨンセがカントリーのジャンルに進出ということで反響も大きかったようですが、実は以前にもカントリー曲を出しているんですよね。

ビヨンセの「Lemonade」収録の"Daddy Lessons"(カントリー曲)。2016年のCMAでこの曲をチックスとともに披露するも、観客の反応は半々。

こちらについては、ビヨンセも今回のリリースメッセージで、制作に5年を要したことを明かしつつ、以前、「自分が歓迎されていないと感じた」経験が元になっていると表現し、だからこそ「カントリーミュージックの歴史を掘り下げ、私たち(黒人)の豊かな音楽のアーカイブを学んだ」としています。

また、先行リリースの「テキサス・ホールデム」では、黒人女性として、初めてホット・カントリー・ソングスで1位を獲得したわけですが、こちらも大きな意味があるわけです。

先行シングルにリアノン・ギデンズの参加。アフリカ系の女性バンジョー奏者。(バンジョーという楽器はアフリカ起源。)アフリカ系アーティストがカントリーミュージックを演奏することの重要性が、コミカルな形とはいえ、提起された。

カントリーミュージックにそもそもアフリカンアメリカン文化のルーツがある、ということは、音楽研究の領域ではかなり前から言われている。また、この歴史的ヒットで他の黒人の女性カントリーアーティストに注目が集まっているようです。

昨年アメリカでのカントリーミュージックの異例な流行。保守反動的な曲もあるが、その一方で、カントリーミュージック界はMickey Guytonをフィーチャーしたり、Charlie Prideに光を当てたり、多様性推進の姿勢をとっています。

テイラー・スイフトが大統領選に与える影響など、音楽と政治の影響が大きい今、このビヨンセのアルバムのリリースは、アメリカの音楽界において「カントリーミュージック」というジャンルが今、歴史、文化、政治がせめぎあう大きな「現場」になっていることを表しています。

大統領選挙の年に、とても大きな意味を持ちます。