1129日にロックフェラーセンターのクリスマスツリーの点灯式も行われたニューヨーク。その人気カルチャースポットの一つ、5番街に面したメトロポリタン美術館は、世界三大美術館の一つと言われていますが、今年の秋、このメットの中に新たな子供向け施設がオープンしました。

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その名もインタラクティブ・ラーニング・スペース「81st Street Studio」と名付けられたこちらの施設、子供たちが科学とアートに触れて、遊べるスペースということなんですが、この一区画、音楽にまつわるエリアを手掛けたのが、ヤマハ株式会社デザイン研究所。

今日は、現地で実際にデザインに携わったYamaha Corporation of America, Design R&D, Manager鷲尾和哉さんにお話を伺います。

99日にオープンした「81st Street Studio」、その中の「インタラクティブ・ミュージカル・ステーション」をデザインされたということですが、まずは、この81st Street Studioについて教えてください。どんな施設なのでしょうか?

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子供たちがいろいろな体験を通じて彼らの感性を豊かに育めるような施設となっています。空間には色々な自然の素材やそれ自体に触って自然な音を合わせたり、インタラクティブなデジタルアートがあったりして、見たり触れたり触ったりしながら子供達の感性を育んでいる空間となっています

*大人の来館者が多いと思いますが、メットはなぜ子供向け施設を作ろうとされたのでしょうか?

美術館そのものが大人だけの空間になりがちなところ、誰もがアクセスできて誰もが楽しめるべきものであるという考えから。特に未来を担っていく子供たちに向けてこそ、強いコミュニティっていうのをちゃんと作るべきだっていうところで今回子供向けの空間を作られたのかなと思います。

*そして鷲尾さんたちが手掛けた「インタラクティブ・ミュージカルステーション」こちらはどんなスペースになっているのでしょうか?

我々はその空間音楽のスペースゾーンを「マテリアルオーケストラ」と呼んで、主に六つの作品群から成り立っています。例えば大きな壁一面にずっと敷き詰められたカスタネットであったりだとか、糸が一本だけウッドベースのような形でこ柱から垂れ下がっていたり・・・そういったものを叩いたり、押したり、弾いたり、色々な行為を通じてさまざまな音を楽しめる空間となっています。

楽器を作るという思いはなく、もっと原始的なピュアな音、自然の音がなぜ発せられるのか、音階がなぜ変わるのかなど学べるようになっています。

昨今デジタルな音など、自然の音に触れない子たちが多い中、生活音や自然音など、日常の中でいっぱいの音に満たされていることに気づいてもらいたいと思い、できるだけ自然の音にこだわりました。

*鷲尾さんは実際にオープニングにも出席されたそうですが、どんな反応でしたか?

世界トップクラスの美術館っていうところで人の子供たちの数もダイバーシティもすごくて、圧倒されました、予期せぬ反応にすごく刺激的でした

例えば、子供たちのピュアな行為で行くと、「叩く」という動作は本能的に持っているものの、「弾く」という行為は、意外と本能的にないもので、誰も弦に触らないという事態も。やっぱり音っていうのは人それぞれ感じ方だなって改めて思いました。

子供たちが感性を育むことができる空間。音にはいい音、悪い音はなく、好み、感性のものだからこそ、自分の好きな音を見つけ、興味を広げるといことで、感性をはくぐむ。そんなお手伝いをするこのスペース。音の発見の場所・・・素晴らしいですね。