この春、政府が発表したのが、ひとり親が受け取る養育費の受領率を2031年までに現在の28・1%から40%に引き上げるという目標。かなりの大幅アップですが、それでも、いくらあっても足りない養育費。

子育てに必要な費用は、学費から、身の回りの品、そして、子供の成長によって必要になる衣服や靴。特に靴は、あっという間にサイズが変わってしまい、半年ごとに買い替えが必要となるわけですが、通学用の靴から運動用のスニーカー、そして学校によっては上履きなど、何足も必要なケースが多いですよね。

大人の靴に比べ、価格も2500円から3000円前後と、1足だけならそれほどの負担にならないかも知れませんが、次々と買い替えが必要になり、さらに、足が速くなる靴やキャラクターの靴など、子供たちからのリクエストも出てくるようになったり・・・そうしているうちに、出費がかさみ、そして、破棄する際にはゴミとなってしまう子供の靴問題。そんなところに着目したのがインドの実業家、サテャジット・ミタルさんです。

親の負担を軽減し、かつ、子供たちは、常にぴったりの靴が履けるように、と、幼馴染のクルティカ・ライさんと共に靴ブランドを設立。子供の成長とともにサイズが変わるという画期的な靴Arettoを開発されました。今日は、そんなミタルさんに事前にお話を伺った模様をお届けします。

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今回はお時間、本当にありがとうございます。画期的なプロジェクトarettoなんですが、靴が子供と共に成長するというのは本当なのでしょうか?

はい、その通りです、arettoには3つのサイズがありますが、これは、研究から分析したもので、子供の足の成長には3つの段階があると考えたからなんです。

よちよち歩き、小さいお子さん、そして子供と、1歳から10歳までの子供に対応しています。この靴の開発には2年間の月日をかけ、徹底的に足の成長の過程を研究しました。

その中で、子供たちは多くの時間、間違ったサイズの靴で過ごしているという現状でした。子供の成長が早いため、親は少し大きめの靴を買う、そして、ちょうどいいサイズの時間は短く、その後はきつい靴を履いて過ごしているという事実です。

なので、arettoの靴は、子供の成長と共に広がる設計にしました。足の成長というのは、縦、横、高さと3方向に育つものなので、この靴も3方向に伸びる、(成長する)よう設計したんです。ソールも広がるようにし、上の部分はストレッチで伸びるというもの。これまでは、靴によって足の形が決まっていましたが、この靴は、足の形が靴の形を決める靴なんです。

足によって靴の形が決まる・・・なんともユニークな発想ですが、成長の速さも違う子供達、実際に1から3歳は3ヶ月、3歳から6歳は4ヶ月、6歳以降は6ヶ月というタームで考えたというミタルさん、そのインスピレーションはどこから来ているのでしょうか?

実は、「花」が咲く姿からインスピレーションを受けてこの靴を開発しました。自然界で蕾が開くように、ゆっくりと、子供の足の成長に合わせて伸びていく靴なんです。

上の部分は特殊な編み込みの手法で伸びる素材にして、ソールは、8から10のブロックに分かれていて成長に合わせて伸びる仕掛けです。まるで靴下を履いているように足の形に伸びる設計になっています。

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3方向に伸びる(成長する)というarettoの靴。実際には、2サイズほど伸びる設計になっているそうですが、成長の比率も縦横違うので、独自に伸びる角度なども計算し尽くされて設計されたということなんです。

インドだけでなく、アメリカ、ヨーロッパ、そして日本と世界の色々な国を見てきて、親たちは大きめの靴を買っているということがわかりました。時には2サイズも大きい靴を買っているんです。

もちろん、養育費にどれだけかけられるか、その家庭の事情も大きく関係しますが、子供たちは、最初は、靴の中で足が泳いでいるような状態、そこから1ヶ月から2ヶ月で足にあった大きさになり、その2ヶ月後には今度はキツくなってくる。そう考えると、3分の1の時間しか、足にピッタリした靴を履いている時間がないということなんです。でもどうでしょう?大人たちに2サイズ大きな靴を与えたら・・・それでスポーツしたり、日常的にブカブカだったりきつい靴を履かなくてはならなかったら・・・その不自由さを解決したいと思ったんです。私たちはスマホだったり、様々なテクノロジーで快適な生活を送っているのに、なぜ靴はこんな状態なのだろうと。

2年の開発時間をかけ、子供たちの足、そして成長を考えて作り出されたarettoの靴ですが、お値段の方は、どうなんでしょう?

他のブランドと比べても、かなり手頃なお値段だと思います。人気のスニーカーブランド、例えば、アディダス、ナイキなどと比べていただいても、かなりのお手頃価格で設定していますし、時には、クロックスよりもお安い場合もありますよ。ですが、生産工場はA+の評価をいただいている工場で生産しているので、高品質の靴になっています。

子供の成長に合わせて成長してくれるにも関わらず、お手軽なお値段・・・いいですね。そして、この靴には機能的にも徹底したこだわりが込められているようです。

1歳から3歳までの最初の靴は、その後の成長にも大きな影響を与える大事な時期で、ちゃんと合った靴を履くことが大切です。Arettoの靴は、その時期に裸足のような感覚を味わうことができ、大地を踏み締める感覚を得ることで、神経も刺激されるようになっています。子供たちの足の成長に必要な要素がちゃんと込められた靴なんです。

ということでした。ミタルさん、ありがとうございました。ちなみに、海外からのオーダーも入っているそうで、つい最近、日本の個人オーダーが入り、発送したばかりだそう。日本のショップの棚にArettoの靴が並ぶ日、楽しみです。