この時間は「全米俳優組合のストライキ」について、アメリカのロサンゼルス在住、ハリウッド外国人記者クラブ会員の映画ジャーナリスト中島由紀子さんに回線を繋いで、 お話をお伺います。
JK :まずはおよそ43年ぶりの大規模スト、とのことですが、全米俳優組合はどのような組織なのでしょうか?
中島: アメリカで活動する俳優やアナウンサー、ラジオDJ、放送ジャーナリスト、ダンサー、スタントマンといった出演者だけではなく、放送番組関係者など幅広い職種が加入するSAG‐AFTRA(直訳すると映画俳優組合-アメリカ・テレビ・ラジオ芸術家連盟)で、組合員はおよそ16万人。俳優だけで生活している人は2%程度。脚本家協会もストに同調しています。
JK :主に映像分野に関わる方々のストライキかと思いますが、現状のハリウッドではどんな状況なのでしょうか?
中島:ハリウッドは完全にシャットダウンされています。そして撮影所のそばではデモが行われています。カメラ前はもちろん、それ以外では、アフレコ、TV出演、および映画館で公開される予告編(プロモーション)、声優、歌、ナレーションなどの仕事はできません。またバックグラウンドの仕事では、メイクのテスト、リハーサルやカメラテスト、スキャニング、自撮りを含むオーディションや面接、あらゆる周辺活動も行わないことになっています。
JK : 今回の発端はネット・メディアで配信されることも含めた報酬の引き上げ、視聴者数に基づいたストリーミング報酬、を要求するということですがシリコンバレーとハリウッドの温度差が出ているのでは?
中島:そもそも再生回数をはじめどれくらいの利益が配信によって上がっているのか不透明なところが問題の発端です。他の事業は儲かっていても配信では利益が出ていない、と説明されたとしてもその中味が全くわからないうえに、ストリーミングの契約に関しては不公平。再放送ごとに支払いを受けるわけではないといいうのが大きな不満のポイントになっています。
JK : また人工知能(AI)の利用によって、一旦撮影収録したものを、加工して使い回すという点についても抗議が行われていますよね。
中島:AIを使って既存のセッションを再利用させてくれという考えに対しては、姿や声についてはいちいち支払え、というのが俳優協会のスタンスです。しかしシリコンバレー側は現時点ではそもそも交渉のテーブルにつかないしその気もない様子です。俳優側も巨万の富を得ている人と、生活がギリギリという人の格差があるため、交渉がないまま長期化するとやがて仲間割れをし俳優協会側がつぶれるのを待っているのでは、といううがった見方もあります。
JK :トム・クルーズの新作プロモーション来日中止のように世界に波及していますがこれはいつ頃まで続きそうだと考えられますか。
中島:次のシーズンのテレビの撮影などは9月くらいからスタートしますし、スト前に撮影したものについての編集作業は許されているので、現実問題としては10月くらいから交渉がスタートする可能性はありそうです。