京都大学の山中伸弥教授らが世界で初めてiPS細胞の作製を発表したのは、2006年8月のこと。2012年には、ノーベル医学・生理学賞を受賞されました。そんなiPS細胞なんですが、今年の初めには、「5月から産業化もスタート」という新聞の見出しも見られ、実際に現在、iPS細胞を使った様々な治験が始まっています。

医療の未来を変えるとも言われるiPS細胞・・・ですが、一体どんなものなのか、あまりよく理解できていない、という方多いのではないでしょうか?

そこで、今日は、iPS細胞に関する基礎知識から、現在の状況、そして今後のお話しまで京都大学iPS細胞研究所のサイエンスコミュニケーター 和田濱裕之さんに事前にお話を伺った模様、お届けします。

iPS細胞・・・夢の再生医療が実現する、と注目が集まりますが、最近も多くのiPS細胞にまつわるニュースを目にします。

例えば・・・網膜の病気の治療を目指す臨床試験がスタート、ヒトiPS細胞から人工心筋組織を開発。iPS細胞を用いたALSの新たな治療薬開発など。そこで、今、iPS細胞はどんな段階にあるのか伺いたいのですが、まず、簡単におさらいです。

iPS細胞とはどんな細胞なのでしょうか?

iPS細胞というのは無限に増殖することができる能力を持ち、私たちの体の中のあらゆる細胞に変化するということができる細胞です。

どんなことができると期待が寄せられているのでしょうか?

例えば病気になって悪くなってしまった細胞をこのiPS細胞から作った新しい細胞と置き換えてしまう再生医療や病気の仕組みをiPS細胞を使って再現して新しい薬の開発などに使えると期待されています

*現在どのような状況にあるのでしょうか?

まだ治療という段階には至っていませんが、様々な研究機関でips細胞を使って新しい治療法を作ろうと言う研究が進んでいます。日本ではすでに10を超えるプロジェクトで新しい治療法が治験や臨床研究と呼ばれる段階に入っています。

一番実用化に近いと思われている病気とは?

目の加齢黄斑変性という病気や脳のパーキンソン病などに対して再生医療を行うというプロジェクトがかなり進んでいます。

将来的には世界中の人に適合するようにしたいというのは?

臓器移植では数万人に一人の割合でしか型が合わないと言われているところ、I PS細胞の場合は予め細胞の型を選ぶことができるので比較的拒絶反応を起こさないものを選ぶことができるということになります。

我々と連携しているiPS細胞研究財団では、様々な人に適合するような細胞を選んで保存しておくことで日本人の4割をカバーすることができると考えています。

ただ実際に移植して本当に問題ないかどうかというのはこれから。またさらにゲノム編集という新しい技術を使って世界中の方にも適合するようなips細胞というものを作って、すでに研究機関や企業で提供できる体制を整えています

一番今ハードルになっていることは?

今一番ハードルになっているのは、いろいろな病気に対して研究が進んでいる中、まだまだ新しい治療法ということで、手探りで確認しながら進めていると言う状況です。

将来的には、色々な病気に貢献できると思いますが、有名なところで言うとガンや糖尿病などにも新しい治療法を提供できる可能性があると思っています。一番早いものに関してはこの数年ぐらいで実際に患者さんに多くの方に受けていただけるような治療になるかなと思います。

今日は、京都大学iPS細胞研究所のサイエンスコミュニケーター 和田濱裕之さんにお話を伺った模様、お届けしました。研究機関内だけでなく、製薬会社などと連携して、臨床試験や治験が行われる段階に入っているというiPS細胞。日本人の4割に適合する細胞が備蓄できているというのも驚きでしたが、数年後には、実際にiPS細胞を使った新しい治療法が出てくることになりそうです。「不治の病」と言われたガンやALSが治る未来、待ち遠しいところです。