私たちの周りに存在する様々な「音」。このラジオももちろんその一つですが、スマホの着信音、エレベーターの到着音、駅の発車メロディーに電車、車、バスの走行音など、様々な「音」がありますよね。そんな街の「音」にフォーカスし、世界中から集めているというのが、オックスフォード在住のStuart Fowkesさん。彼が運営する世界の街の音をコレクションするサイト「Cities and memory」には、すでに100以上の国と地域から様々な音が集まっているというプロジェクトなんです。世界中の人たちから寄せられた音。公式サイトには、remixing the world, one sound at a time 世界を一つの音ごとにリミックス、とあります。どういうことなんでしょうか?

Cities and memoryは、世界中の「音」を集めるプロジェクト。教会の音から路上の音、自然の音など、様々な音を集めて、それを世界のミュージシャンたちに送り、その音から新たにイマジネーションを膨らませて、新しい音楽を生み出してもらうというプロジェクトなんです。ウェブサイトには、オンライン・サウンドマップを作っていて、そこには、送られてきた元の音とその音を使ったリミックスがアップされています。僕はもともとサウンドレコーディングに興味があって、どんな音も「音楽」になり得ると思ってきました。音楽のインスピレーションのかけらになり得ると。だからこそ、全てをオープンにしてきて、誰もが音を送ってきたり、その音を使えるようにしてきたんですが、想像以上に広がり、今では、1000人以上の音楽家たちが参加してくれています。世界最大級のサウンドプロジェクトと言えるまでに成長して嬉しい限りです。世界中から送られてくるという「音」世界113の国と地域からの音が登録されていますが、どんな方たちが参加されているのでしょうか?録音の機材はどんなものを使っているのでしょう?
音素材から音楽を再構築するのは、音楽家、サウンドアーティスト、サウンドプロデューサーにアマチュアミュージシャン、などがいますが、録音素材を送ってくる人は、もう、本当に様々。機材も20年前と違って高性能の録音機器がいるわけでなく、iPhoneやシンプルに簡単なマイクで拾った音などで大丈夫。コロナ禍では、「Stay home sounds」というプロジェクトを企画して、一般の人に住む街や日常の音など、様々な生活音を送ってもらいました。すると、コロナによって変化した街の様子から、ライフスタイルの変化など、まさに貴重な音の記録として、コロナ禍という一つの時代を切り取ることができました。
変化する社会を映し出す音。Stuartさんがこの「Cities and memory」をスタートさせたのは、2015年のこと。そこから、どんな音の変化が生まれているのでしょうか?
スタートからこの8年で様々な音を収集でき、まさに歴史を積み重ねるように音の変化も顕著に感じられてきました。昨年には、「消えゆく音」プロジェクトというものを展開したんですが、テクノロジーの進化と共に消えゆく音を集め、表現しました。例えば、街の音として大きな役割を占める「車」の走行音も電気自動車の普及と共に大きく変化しています。今までのような大きな音ではなく、静かに走行するEV車。その割合が増えれば増えるほど、街の雑踏の音も変わって私たちの「生活音」も変化してくるんです。
送られてくる音は、4分から5分程度のものが多いようですが、基本20分以内の音素材。その膨大なコレクションから、最近は様々な企業やプロジェクトからも問い合わせがあるそうなんです。
一緒にやりたいと言ってくれる人や音を使いたいという連絡もたくさんもらえるようになったのは嬉しい限り。例えば、ドイツの研究機関と協力して南極の音を集めたり、その音を使ってミュージシャンが気候変動を訴える音楽にして発表したりと、単なる「音」ということでなく、色々な問題に広がっている。また大英図書館にも先ほど話した「Stay home sound」がアーカイブされたりそのほかの音も記録として保管されることになっています。
広がりを見せるグローバルサウンドプロジェクト「Cities & memory」。Stuartさんのゴールはどんなものなのでしょうか?
もっと多くの地域に参加してもらい、より多くの音楽家に参加してほしい。また、コロナ禍のプロジェクトのように、様々な企画も走らせたいし、「世界を聞く」という提案、新しい音の表現を人々に提案していきたい。日々、自分のメールボックスを開く瞬間は本当に楽しいんだ。この間なんて、北朝鮮の地下鉄の音が届いていたこともあった。そんな風に、想像もしていなかった音が届くこともある。驚きに満ちている世界の様々な音風景を送ってもらうこのプロジェクトは、知らない街から音のポストカードをもらうような感じ。Cities and memoryのサイトでは、いつでも皆さんからの投稿をお待ちしています!様々な街の音、僕らが知らない風景を音にして送ってください。
今朝は、世界の街の音をコレクションするサイト「Cities and memory」についてお話伺いました。
街の音も変化していますが、実際に消えゆく音、というものもあるんですよね。例えば、ロンドンでは中々見かけなくなった赤い電話ボックスの公衆電話の音、他にも8ミリフィルムカメラの音、蒸気機関車の音・・・スチュワートさんによれば、産業革命以前は数百年の間、鐘の音、馬車、馬の蹄の音などあまり音の変化はなかったそうですが、現在は、数年前の携帯の着信音が古く聞こえたり、急激に音が変化していると言います。時代を、そして、世界の様々な地域を「音」で旅する空想旅行、「Cities and memory」のサイトで楽しんでみてはいかがでしょうか?アドレスは、citiesandmemory.comです。ぜひチェックを!