皆さんご存じ「ドラえもん」。ドラえもんが居たらいいな、ドラえもんの道具があったらいいな、そう思ったことありませんか?その「ドラえもん」を〈本気で〉作ろうとしている方がいます。そんなこと、実現可能なのでしょうか!?
今朝は、「ドラえもんを本気でつくる」ことを目指すAI研究者であり、日本大学文理学部 情報科学科 助教でもいらっしゃる大澤正彦さんにお話を伺います。

JK : 幼少の頃からドラえもんを作りたいと考えていたとのインタビュー拝見しましたが、TVや漫画そのままのドラえもんを、つまり「どこでもドア」を出せるようなドラえもんを作りたいということですか。
20年以上、自分が作りたいドラえもんは何なのか、と考えています。道具、感情、記憶など、どの機能があればドラえもんになるのかと考えた時、それは無理だと気づきました。ドラえもんの頭が硬いか柔らかいかSNSで聞いたところ、意見が割れました。つまり、ドラえもんの定義を決めてしまったら、皆のイメージに合わせるのは無理だと思ったのです。「世界中の誰もがドラえもんって思うこと」自体がドラえもんの定義であり、皆がドラえもんだと思うものを作る、というのが僕にとっての「ドラえもんを作る」ということになりました。
JK :40名ほどのチームと一緒に動いているとのことですが、具体的に何をどうすればドラえもんを作ることができるのですか。
実際には、2014年に人工知能を作ろうと立ち上げたコミュニティに2,600人ほど、大学内の研究センターには200人ほど、というように、多くの方々と繋がりながら進めています。そんな皆さんと、人も歩み寄るし、ロボットも歩み寄る、そういう技術を作ろうとしています。AIが人の心を学び人に歩み寄るため、そして逆に人がロボットに歩み寄るにはどんなプログラムを作ればいいのかを研究し、実際にロボット作ってみて人とコミュニケーション取らせて試行錯誤しています。
JK :具体的には、どのような形をしていて、どのような機能を持って、どのように人と繋がるのですか。大きさとか含め。
今作っているのはおよそ20センチの小さい真っ白なのっぺらぼうの、「ドラドラ」としか言えない、ドラえもんの「ミニドラ」をモチーフにしたロボットです。全然喋れないのですが、例えば「ドララ」としか言わなくとも、人間側が察し、歩み寄ることでしりとりが成立したりします。側から見るとそう見えなくとも、実際にやっている人は人間としりとりをしている感覚になり、そのような人間側の感じ方も研究しています。「ドラえもんの心ってどこにあるんですか」と聞かれた時に「のび太の中にあると思います」っていつも答えています。今開発中のそのロボットとのコミュニケーションでは、目の前で喋っているその人の中に自分の心が入っていくような、心に出来た余裕に相手(ロボット)の心が入り込んでくるような、そんな感覚になるんだと思います。
JK :製作のロードマップはどこにあって、どこに向かっているんですか。
2014年から2044年まで30年間の間にできることをやり切ろう、とロードマップを考えています。直近では、先ほどの「ドラドラ」しか言わないロボットを作っているのですが、「ドラドラ」だけで完璧にコミュニケーションを取れるところまで行けると思っています。幼児のように、言葉をしっかり喋れなくても親とのコミュニケーションが成立するようなレベルまでは行けると思います。そのレベルまで行ったら、単語を発話し、更には語彙を増やすことは簡単だと思っていて、つまりは人間の言葉を獲得していくプロセスと全く一緒なのです。敢えて「言葉を喋らないコミュニケーション」を先にブラッシュアップし、その後に言葉が付いてくるという順番だと、人と関わり合う中で成長できるロボットが完成するんじゃないかとと思っています。未完成の状態で届き、皆さんの手元でドラえもんとして育つというイメージであればポジティブに受け取られるのでは、と。誰かが作ったドラえもんがいきなり届く、ではなく、自分の家で育つロボットがドラえもんになっていく、という研究ロードマップを描いています。
今朝は、「ドラえもんを本気でつくる」ことを目指すAI研究者であり、日本大学文理学部 情報科学科 助教でもいらっしゃる大澤正彦さんにお話を伺いました。とても哲学的な概念ですね。現在は、ロボットのプロトタイプはバージョン2まで出来ていて、既に色々なところで展示をしているとのこと。バージョンアップの過程も逐次発表していくとのことで、またフォローアップしたいと思います。