今週月曜日に発表となった「世界大学ランキング」。1位には、MIT、マサチューセッツ工科大学が11年連続で選ばれましたが、日本の大学は、100位以内に5大学が入り、最高は東京大学の23位となりました。そんな中、実は、沖縄に、「質の高い論文ランキング」で東大の上を行く、世界9位にランキングされた大学院大学があること、ご存じでしょうか?

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昨年11月に設立10年を迎えた、沖縄科学技術大学院大学、通称OIST世界50ヵ国から集った252名の生徒のうち、8割が外国人で、40%が女性!というのも驚きなんですが、世界の研究者たちが憧れるという大学院大学とは、どんな施設なのか、今日はお話伺いたいと思います。お話を伺うのは、OISTの海洋生態物理学ユニットで研究と指導をされている御手洗哲司准教授です。

まずは、基本的な質問ですが、OISTはどんな大学院大学なのでしょうか?

あえて学部を設けず、多分野の研究者が交流し、異なる分野が交わる領域を研究できるようにしています。4年生大学を卒業した段階で入学でき、5年間で博士号を取得します。

●生徒数は?

今年の5月現在で252名(50の国と地域)。そのほかに研究員と研究スタッフがおよそ700人、事務スタッフが370人、全体としては1300名ほどです。

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●敷地も広大ですよね?

沖縄北部の亜熱帯の森の中にあるキャンパスの敷地は、東京ドーム20個分と言われています。

●世界各国から研究者が集まっているそうですね?外国人入学者はどれくらいいるのでしょうか?

学生は、8割が外国人です。

●なぜこれほどの人気が? OISTの魅力とは?

学生にとっては、垣根のない学際的な研究や、最先端の研究機器が使えることや、国際的な教員のレベル、またリサーチアシスタントシップとして研究にかかる経済的支援を受けられる点などが考えられます。私たち教員や研究員にとっては、やはり、OISTのコンセプトに共感しているところが大きいと思います。元衆議院議員の尾身幸次先生が、ノーベル賞受賞者を含む著名な研究者とともに練り上げた、夢の大学院学構想が、現実のものとなり、そのプロジェクトに、立ち上げから関われるというのは、本当に魅力的なのです。学生も事務職員もきっと同じ気持ちではないでしょうか。

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そうなると、校内は英語が基本ですか?

はい、英語が公用語です。

従来の日本の大学院とは違う感じがしますが・・・

かなりフラットな形で、学生でも自分の研究プロジェクトを責任を持って進めます。若い学生の主体性をより尊重する形は、日本のみならず、アメリカの大学に比べても、特徴的だと思います。

入学して1年目は全員が3つの研究室(ラボ)を経験しないといけないというシステムです。そのうち1つのラボは自分の専門外の研究室を体験します。例えば物理学を学んできた学生が脳科学の研究室に入る、といった感じです。

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こちらでは優秀な論文が発表されていると伺っていますが、そういった優秀な研究が行える理由とは?

世界から優秀な人材を集めていることに尽きます。優秀な人材を世界中から集めるために一役買っているのが、研究の自由度が高いファンディングモデルです。これは、5年間という比較的長い期間、安定した資金を教員に与えるもので、このおかげで教員が研究資金集めに奔走するだけで疲労してしまうことなく、真に革新的、興味深い事象を自由に探求することができます。また、今後は、さまざまな研究分野の垣根を超えた、いろんな分野の知識を掛け合わせた、本当に学際的な研究成果が増えてくると思います。

●ちなみに、現在行われている研究の中で注目されているものにはどんな研究がありますか?

研究分野は物理学、神経科学、環境・生態学、化学など多岐にわたりますので、全てご紹介することは難しいですが、現在、力を入れている分野の一つは、沖縄の地理的特性を活かした海洋生態系の研究です。例えば、地球温暖化がサンゴ礁の海洋生態系に与える影響を調べたり、さらには、逆に、サンゴ礁海洋生態系が大気中の二酸化炭素増加を抑制する役割を理解する研究ですとか、沖縄近海での海底資源の掘削による深海の海洋生態系への影響評価、今後増加する台風が地球規模で海洋生態系に与える変化などです。

●OISTの今後の構想とは?

去年11月に設立10周年を迎えました。研究、教育における世界レベルの優れた成果を出し続けることはもちろんですが、沖縄のイノベーションのハブとなることを目指して、テクノロジートランスファーに力を入れています。今後新たな技術系スタートアップを生み出したり、起業家を世界中から呼び寄せ、OISTを中心とした新たな産業を作り出すために大学全体で取り組んでいます。

ありがとうございました!