今日は、食べずに「のどごし」を体感できる装置とその研究をピックアップします。飲食物が喉をとおる感覚、飲み込む感覚を嚥下(えんげ)感といいますがこの「飲み込む感覚」を人工的に作り出すことが出来るとのことです。飲み込むことが難しい高齢者の方々の手助けにもなる、尚且つ、東京に居ながらにして世界の食材の咀嚼感を得ることができるかもしれません。一体どのような仕組みになっているのでしょうか。今朝は、この研究を手掛けました、電気通信大学 野嶋研究室 研究員 溝口泉さんにお話しを伺います。

20220107f.png

JK: 何を食べずに「のどごし」を体感できる装置、どのような仕組みか教えてください。

IM 人間は、物を飲み込む際に喉の筋肉が動き、無意識かもしれませんが連動してその周辺の肌が動きます。その肌の動きを再現することで飲み込む感覚がでることを発見しました。装置自体は、モーター付ベストからコードがのびていて、そのコードの先に粘着シートがついています。その粘着シートを喉の部分の装着し、ベストに付いているモーターで引っ張る仕組みになっています。あくまで引っ張るのは喉の周りの「皮膚」であって、喉やその筋肉ではありません。

JK:この装置はどのような発想から生まれましたか。きっかけを教えてください。

IM 元々は「人間にえら呼吸を体験させる」というバーチャルリアリティを用いた作品を作っている時、呼吸と同時に水を飲む感覚の研究を始めました。その作品から独立して飲み込む研究を進め、なかなかのリアリティを出せることがわかりました。

JK:高齢者の方々は様々な病気で飲み込めなくなることがあります。そういう方々にとっても価値がありそうですね。

IM 食事は楽しい体験であるはずなので、嚥下障害のある方にも「のどごし」のあるものを食べられるうになって頂けると嬉しいです。装置についているモーターの速度を変えることで食べたものの印象が変わるということがわかってきました。その観点から研究を進めたいと考えています。

JK: 日本では手に入らない食材の食感を体感できることができる。もっといえば、一流レストランの一流パスタを飲み込むときのあの食感を再現できる可能性もあるということですか。

IM 達成するまでにはすごくたくさんの研究開発が必要になりますが、将来的な夢としてはそのようなことを目指して各方面研究を進めているかと思います。そのためには喉の動きや「のどごし」の膨大なデータを集める必要があります。現状、計測は行なっておらず、被験者の体感や実感のアンケートを集めている状況ですので、いずれ様々な計測にも広げていきたいと思います。

JK:次のステージとしてはどのようなものをイメージされていますか。

IM 今は嚥下感に集中した研究を進めている状況ですので、今後は視覚、味覚、嗅覚などの複数の感覚と組み合わせてどのように食事の体験が変化するか、よりリアルになるかなどを見てみたいと思っています。

JK:より研ぎ澄まされた「のどごし」体感の研究、期待しています。