アメリカの音楽産業における音楽ヒットチャートと言えば1958年に始まりましたBillboard Hot 100。音楽情報WebサイトStereogum(ステレオガム)では The Number Onesという記事のシリーズ内で歴代Billboard Hot 100 No.1を獲得した曲を1曲ずつ解説していて、その数は1130曲を超えています。

今日1231日現在の最新記事では1991127日のNo.1曲、マイケル・ジャクソンの Black Or Whiteを解説しています。今朝は、Stereogumシニアエディター、Tom Breihan(トム・ブライアン)さんに伺います。

JK なぜこのような企画を始めましたか。

TB トム・ユーイングさんというイギリス人ブロガーが、UKチャートを解説している「ポピュラー」と言うブログを長らく書いているのを知っていました。何年か前のある日、子供たちの水泳教室に付き添っている時に退屈で、ナンバーワンの曲をリストアップしてそれに解説を加えたものはあるかな、と思って探してみたらなかったので、自分でやることを思いつきました。頭の体操にもなりますしね。最初はひとつひとつの記事が短かったのですが、今は徹底的にやろうと沼にはまった感じになってしまい、かなりの作業量になってしまっています。毎週3回くらい頭を抱えながら書いています。

JK 1100曲以上あって、更にビルボードチャートが始まったのが1958年。当然生まれる前の曲がほとんどですよね。リサーチはどのようにされていますか。

TB インターネット含め、資料はそこら中にあります。個人的には、情報を掘り起こすリサーチの作業が1番面白いです。例えばビートルズは皆さん知っていますよね。既に解説されているものも多く存在し、資料も沢山あります。一方、あまり知られていないバンドがいきなりNo.1になると困ります。例えば一発No.1を出してそのまま高校教師にキャリア変更しちゃう人もいます。そういう方々を含め、とにかく興味が尽きません。

JK 1958年から始まって90年代まで来ていますよね。今までの中で歴史的なターニングポイントはありましたか。

TB ターニングポイントはいくらでもあります。来年出したいと思っている本を今書いているのですが、その中では歴史的なターニングポイントとなった20曲に絞り込んでます。これらの曲がなぜポップカルチャーの中で重要だったか、というような解説をしています。例えばビートルズの I Wanna Hold Your Handという曲がどのように音楽史を変えたかを解説しています。私の選んだ20曲は、その前と後でガラリと状況を変えたようなものです。例えば、初めてのディスコヒット、初めてのK-Popヒット、初めてのヒップホップヒット、こういう音楽も歴史的な転換点です。ヒットソングって、みんな同じように聴こえたりするじゃないですか。でもいきなり違うものが出てくることもありますよね。こういうポイントを私はピックアップして解説しています。

JK 解説だけでなく、それぞれの曲に「10点中何点」というレーティングをしていますよね。どのようなフィードバックがありますか。

TB 皆さんの「議論のネタ」提供という意味でもレーティングを敢えて出しています。私を触発してくれた前述のUKチャートを追っているトム・ユーイングさんの「ポピュラー」でも同様に議論を促すような内容になっています。なぜこの曲がいいと思うか、なぜナンバーワンだけどダサイのか、などを解説すると、議論が始まります。また、私はツイッターでも全面的にオープンでディスカッションしています。当然私の記事は主観で書いているので、議論の余地もありますし、怒る方もいてしかるべきだとも思います。ただ私の考えをそのまま提示しているということです。

JK トムさんにとって「音楽」とは何ですか。

TB 生涯をかけて私が虜になっていることです。私は音楽を通して世界を見ている、と考えています。これ以外の仕事をしたこともありませんし、音楽に情熱を注いで20年間書き続きています。私の興味は音楽に始まり音楽に終わる、という状況です。

JK ビルボードのナンバーワン曲、1130曲を超えていますが、終わりませんよね。いつ追いつきますか。

TB ナンバーワンが出る限り記事を書き続けます。今759番目のナンバーを書いていますが、まだ追いつくまでに何年かはかかります。

JK 隙間時間で書いてるというこの記事、トムさんの豊富な音楽知識、そして音楽への愛が伺い取れます。このシリーズが終わったらダイアモンドディスクのコラムを書こうか検討しているそうです。これからも確実に要注目です。

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