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今日は、アメリカ発の新しい体験型ストア「b8ta(ベータ)」をピックアップします。2015年にアメリカはサンフランシスコで初めてオープンし、アメリカ、ドバイに続き3拠点目として日本に進出、日本国内3店舗目となる渋谷店が先月オープンしたばかりです。「ベータ」では一部商品は販売していますが、販売が主な目的のお店ではありません。最新ガジェットや世界中の先端的そしてイノベーティブな製品を発見・体験・購入できる〈場〉を提供している、と謳っています。この新しい店舗形態、そしてビジネスモデルが注目されていますが、一体どういうことでしょうか。今朝は、ベータ・ジャパンCEOの北川卓司さんにお話伺います。

JK: ベータ、どのようなお店でどのような仕組みなんでしょうか。

TK: 弊社のミッションが「リテールを通じて人々に新たな発見をもたらす」と言うもので所謂通常の小売店のように販売することでの生計を立てているものではなく、店舗内を区画で分けて、区画ごとにに月額の出品料を頂くモデルになっています。

JK:そこで商品を購入することもできますか。

TK: 御出品頂いてる企業様がもし販売したい意志があれば販売可能です。例えば月によっては一切何も販売しない場合もあり得ます。

JK: 消費者としてどのような体験が出来、どのようなメリットがありますか。

TK:一番は「偶然の出会い」だと思います。例えば、ドローンが好きな方が来店し、ドローンの横にヴィーガン餃子など、今までその方が興味を持っていなかったものが置いてあった場合「こういうものもあるんだ」と楽しんで頂けます。且つ、渋谷店では試飲試食も可能です。昨今情報過多と言われている中で、御自身が興味のあるもの以外との出会いは中々難しいと思います。ベータは、自分で偶然の出会いを楽しみに行ける店舗だと思います。

JK: 出品者側としてはどのようなメリットがありますか。

TK: 一つは、都内有数の好立地にベータが3店舗とも出店していますのでタッチポイントとして活用頂けるのが大きいところです。あとは、オンラインストアへの出品同様に手軽に出品頂けるところです。オンライン上で商品の情報などを登録して頂き商品を店舗に送って頂くだけで、後は「ベータテスター」と呼んでいるスタッフがトレーニングの資料を勉強し、出品者の代わりにお客さんに説明します。自社で賄う場合家賃や人件費など結構かかってきますが、それらをベータは定額サービスとして提供します。もう一つは、天井にAIカメラを無数に設置し、こちらで店内のお客様の行動分析をし、可視化します。例えば、区画の前を通った人数、5秒以上立ち止まった人数をAIカメラで自動で測定し、そのような定量的データをマーケティングに活用して頂けます。

JK: カメラ撮影するとなると、プライバシーの見地から疑問を抱く方もいらっしゃるのでは。

TK: いらっしゃいます。そのため、御入店頂く際には免責事項として「店内の行動分析をしています」と記載したものを御一読頂いています。あとは、映像はすぐデータ化し、出品企業様には数値でお渡ししていますのでその個人情報への配慮はなされています。

JK: 実際このデータを提供した出品者側からどんなフィードバックや感想がありましたか。

TK:まずは数値で見られる定量的データです。オンラインで出品した際のインパクトがオフラインで中々可視化できなかったものを数値で見ることが出来るので、それまでの同じ指標で比較できるのは喜んで頂けています。あとは、ベータテスター(弊社スタッフ)がお客様との話の中からどんどん情報を吸い上げていきます。定性的なフィードバックとして「どうしてこの商品は御購入頂けないのでしょうか」と言うことをお伺いします。オンライン上では、「買い物かご」に入れて結局買わなかった理由を聞けないので、そのような情報をお渡しすると喜んで貰えます。

JK: 「買い物かご」に入れないとデータに残らないですよね。マーケティングでいつも話題になるのが新商品を買う消費層の違いです。感度が高い人たちをイノベーター、それに近い人たちをアーリーアダプターと呼び、そのように「先物買い」を好む方々がいます。そのような皆さんを取り込んでも大ヒットに繋がるとは限りません。そもそもここに出品してる皆さんは「マス」を狙っているのですか。

TK: 様々なフェーズの企業様がいて、色々な層を狙ってのアクションが多いです。アーリーアダプターの方に試して頂いて、その声を商品開発に活かしたいですとか、大企業ですと次のフェーズであるアーリーマジョリティに向けてどうやってリーチして新しい層を開拓出来るかがポイントになってきます。そのように新規の獲得と言うものを目指して出される方も多くいらっしゃいます。

JK:ブースごとに出品者の属性やターゲットが変わってくるということで面白いですね。

TK: 出品頂く企業様が変われば変わるほど、商品が入れ替われば入れ替わるほど、新しいお店に生まれ変わります。その都度楽しんで頂けるお客様の層と言うのも自然に変わっていくと思っています。

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JK: コロナ禍でネットショッピングの利用者が増え、様々なアルゴリズムで色々なオンラインでのマーケティングが展開していて、いろんなサジェスチョンがされてくるバーチャルの世界。その中であえてリアルな世界で人々の動向を見るこのポイント、優位性、利点、改めてお願いします。

TK:コロナ禍でECサイトなどへの進出が加速したと思いますが、今度はオンライン上での差別化がかなり難しくなってきたと思います。知っていれば自分で検索出来ますが、例えばアルゴリズムを用いたが故に広告などが全て自分の興味のあるものが中心となって自動的に映し出されてしまいます。すると新しいものとの「偶然の出会い」が少なくなってきます。なので弊社の様にワンフロアで雑多にいろんなものが置いてあり「これは何の店だろう?」と言うのを楽しんで頂くだけで新しい発見と体験と言う物をエンジョイして頂けるのが、ベータの重宝される理由かと思います。また、昨今百貨店や商業施設が少し苦しいというニュースがありますが、皆さんが新しい賃料モデルとしてベータのような「売らない店舗」に注目していて、その期待値も伝わって来ます。

JK: 今後の展開やビジョンを教えてください。

TK:現在日本では東京都内にしかないので、主要都市、人が多く行き交う場所に2025年に向けて約8~10店舗までに拡大したいと考えています。色々な皆様に楽しんで頂ける発見と体験をお届けできればと思っております。

JK:ポイント・オブ・コンタクトという点で、移動型の展開はありませんか。

TK: 面白いですね。パッとでてパッと帰る、というのもやってみたいです。福岡でポップアップストアをやったことがあるので、今後もそういった展開が期待できると思います。

体験型ストア「b8ta(ベータ)