今日は、音源を安全に完全な形で永久保存できる地下貯蔵庫「Global Music Vault」をピックアップします。

あらゆるデータを保存するArctic World Archive(北極圏世界記録庫)や種子を保存するGlobal Seed Vault(世界種子地下貯蔵庫)は既に存在しますが、それらと同様にノルウェーのスバールバル諸島に、今度は音楽を安全に守り貯蔵する、Global Music Vault(世界音楽貯蔵庫)が作られます。様々な種類の色々な音源をどうやって安全に未来永劫貯蔵することができるのか。そしてビジネスモデルとしてはどのように成立するのか。貯蔵される音楽はどのように選ばれるのか。今朝は、そのGlobal Music VaultのManaging DirectorでいらっしゃるLuke Jenkinsonさんに伺いました。
JK :地下貯蔵庫の目的、そしてそもそものきっかけは何でしたか。
LJ :長期にわたって保存する技術に関しては以前から興味を持っていました。今日、息つく間もないかなり速いスピードで音楽業界は動いているので、貴重な音源を記録し保存しなくてはならないと言う思いに至りました。このようなアーカイブを作る技術が私たちの手にある今、自然災害や人間のエラーによって私たちの社会を形作ってきた数々の音楽が損なわれる状況を避けたいと思いました。
JK: どのような仕組みになっていますか。
LJ :3つの矢があると考えて下さい。1つ目はソーシング、「集める」ということです。現在音楽業界全体に声を掛けているところですが、世界中の皆さんと、そしてユネスコの諮問機関である世界音楽評議会にも協力を仰ぎ音源を集めます。これまできちんと録音されず音源として所蔵されてこなかった、例えばアフリカ民族音楽などの様々な音源を集めると言うことです。2つ目はセーフガード、「守る」ということです。データ化して貯蔵できるようにファイル化しカプセルの中に入れて、基本的に永久保存するという技術です。3つ目はセレブレート、「祝する、讃える」ということです。古来からの伝統的な音楽を守ったとしてもアクセス出来ないと意味がないですよね。なので、貯蔵される音楽にアクセスしそれを「讃える」ことができるような場を作りたいと思っています。
JK :貯蔵される音楽をどのように選ぶかと言うことも気になります。
LJ :世界中全ての方々にアクセスして頂きたいというテーマなので、世界中にいる音楽出版社、アーティスト、色々な時代の色々な権利者の皆さんに関わって頂きたいと思っています。協力をお願いしている世界音楽評議会が世界中にリーチ出来るということにも期待しています。まずは選考基準と言う厳しいものを設定せず、世界各地へ我々の取り組みについて発信している状況です。地域ごとの音楽団体と必要に応じてタイアップしたいとも考えています。例えば今アフガニスタンでは歴史的な変化が起きていて、どのように音楽を守っていくかが重要な争点となっています。まだ日本の関係者の皆さんとのコンタクトが進んでいないので、このように日本の媒体でインタビューをして頂けるのは非常に嬉しいです。
JK: 保管料、データ変換料など、諸々の費用はどのようにまかないますか。
LJ :私たちは営利企業として、ファイナンスの面では、まずはノルウェー政府との共同作業を考えています。また正に今世界的なテクノロジー企業とのタイアップも実現しそうなところまで来ていますし、利用者の皆さまのメンバーシップ制度も考えています。このように、利益を出して経済的に自立することを目指します。
JK :Lukeさん御自身は貯蔵するならばどの曲を選びますか。
LJ :良い質問ですね。何を一番に貯蔵したいか、これは良い会話のネタになりそうですね。僕はジェネラリストなので、どのような音楽も好きなのですが...重要だと考えるのは伝統的な音楽ではないでしょうか。トラディショナルな音楽は守るべきだと思っています。
日本からはどのような楽曲の音源が選ばれるのでしょうか。音源を守りたい、貯蔵したいとお考えの音楽関係者の皆さん、是非チェックされてみてください。そして世界を代表するIT企業とのタイアップ、こちらにも期待したいですね。
