今朝は、山で撮った写真を楽しむためのアプリ、「MOUNTONE(マウントーン)」をピックアップ。アプリのプランニングをなさっている日本デザインセンターの長瀬香子さんにお話を伺います。

JK: MOUNTONEというアプリの大きな特徴は何でしょう?ご説明くださいますか?

長瀬 :山の、どこで、何に出会ったか、どんなことを感じたかを美しいログに残し、共有できるアプリです。道中にバラバラと撮り貯めた写真をスマートフォンの中に大量に眠らせているという方もいらっしゃると思うのですが、MOUNTONEを使うと、撮った写真と簡単なテキストを一枚の美しいログにまとめられ同じ写真でも、5年後、10年後、何度も振り返ることができる、一生の思い出に変えることができると考えています。

JK: 登山に行く人はMOUNTONEを使ってどんなことができるのですか?

長瀬 : 旅のはじまりとともにアプリを起動すると、その瞬間から帰ってくるまで、すべての写真や動画は位置情報と共に、MOUNTONE に保存されていきます。帰り道、例えば電車の中などで撮影した素材の中からお気に入りの数枚を選択し、コメントを書いたら、今日の旅をまとめた、世界にひとつのログの完成します。被写体の魅力を引き出すフィルター機能もついていて、高山植物、尾根、風景、それぞれの見どころを丁寧におさめることができます。共同編集機能を使えば、みんなで1 つのログを作ることもできます。こういった仕組みですので、山はもちろん、銭湯巡り、建築探訪、旅行記などにも使っていただけると思います。

JK: 山道がどうなっているのか、自分の位置情報によって山登りを安全に楽しむことに注力を置いているのではなく、登った後の動画編集を楽しむためのツールですか?

長瀬 : はい、その通りです。「山での時間を美しいログに残す」ということを最も大きな価値にしています。日本にはYAMAPをはじめとするすばらしい登山をサポートするアプリがあるので、私たちはそこではなく、たった一度の山での時間をいかに美しく残すかという点にフォーカスしています。(実はプロジェクトの初期に、YAMAPでCXOをされていた安藤剛さんにご相談にのっていただいたこともあります)

JK: MOUNTONEを企画、開発したいきさつを教えてください。日本デザインセンターで企画した方が、筋金入りの山登り好きで、自分の経験からこのアプリを立ち上げたと聞いています。

長瀬 : 日本デザインセンターには事業構想という仕組みがあり、クライアントワークではなく、社員自らが「こうだったらいいな」「だったりして」と感じることをプロジェクト化して社会への実装にむけて取り組むという社内制度があります。MOUNTONEも事業構想プロジェクトのひとつです。発案者は鍋田宜史というプロデューサーで、社長の原研哉とともに日本の観光資源を生かすプロジェクトを多く担当しています。鍋田がプライベートで仲間とともに様々な人気の山、マイナーな山に登っているなかで、弊社がある銀座にはこんなにも人がいるのに、山には海外からのお客様が少ないということに気づき、実は日本の山は、こんなにもすばらしいのに、外国の方に対してはまだその魅力を十分に活かしきれていないのではないか。という考えたところからスタートしています。

JK: 一般の人が広く使うことができるためには今後、何が必要でしょう?

長瀬 : 世界中で古くから紀行文や旅のエッセイが多く出版されていることからも「自分の歩いた軌跡とともに、美しく思い出を残す」という欲望は普遍的なものだと考えています。それを美しいビジュアルとともに簡単にできるのであれば、多くの方が山登りを一生の思い出にでき、外国のお客様であれば日本での思い出として記憶いただけると思います。いずれは日本全国の山や平地でも使えることが目標ですが、まずは、全国の国立公園や、特定の市町村、施設内など、限定された範囲でのリリースを目指しています。たくさんの山を持つ自治体や、広大な土地を持つ牧場、温泉街などまずは一緒にMOUNTONEをかたちにしてくださる方を探しています。

JK: 山で撮った写真を楽しむためのアプリ、MOUNTONEのプランニングをされている、長瀬香子さん、ありがとうございました。