けさは、カンヌ国際映画祭の現地取材を終え、帰国された映画ジャーナリストの立田敦子さんにお話を伺います。

7月6日から17日まで、南フランスの街、カンヌで開催された第74回カンヌ国際映画祭は世界で最も権威のある映画祭のひとつ。昨年は新型コロナウィルス感染拡大の影響で開催が見送られ、今年、2年ぶりに対面での開催となりました。日本の映画監督、濱口竜介さんの「ドライブ・マイ・カー」が脚本賞を受賞しています。早速、現地を取材してきた映画ジャーナリストの立田敦子さんにお聞きしましょう。

JK:立田さん。フランスから帰国されて、2週間の自主隔離中なのですよね...。2年ぶりとなったカンヌ国際映画祭。世界最大の国際映画祭が対面で開催されたことに、世界の映画関係者はどのような心境だったのでしょう?

立田:みなさん、なるべく早く通常通りに戻りたいと思っているようです。パーティも開催されましたし、インタビュー取材もありました。日本から行った方もいますし、帰国後の自宅隔離がなければもっと多くの映画関係者が行ったと思います。ジャーナリストの数は、2019年の半分くらいでしたが、ヨーロッパの安全な国に指定されていた国からは来ていたようです。北米、イギリスからは少なかったようです。

JK そして最高の賞とされているパルム・ドールを審査委員長のスパイク・リーが最初に発表してしまうというハプニングがありました。

立田: 最初の賞と、一番の賞を間違えたのでは?と伝えられていますが、疑問です。段取りの打ち合わせのときに聞いていなかったのか。それにしても、パルムドールは最後以外に発表することはあり得ないので、スパイク・リー監督がお疲れでぼーっとしていたのではないか、と謎。

JK:脚本賞を受賞した濱口竜介監督作品「ドライブ・マイ・カー」が日本映画として初となる脚本賞に輝いた。また、国際映画批評家連盟賞、AFCAE賞、エキュメニカル審査員賞という3つの独立賞も受賞。濱口監督は、「まずお礼を言いたいのは、この物語を与えてくれた原作者の村上春樹さんです。どう現地では評価されていたのでしょうか?

立田:今年のコンペ24本で最も評判のよい作品であったことは間違い有りません。イギリスの有力紙、ガーディアンは、パルムドール予想を出していました。個人的にも監督賞以上の賞(その上はグランプリ、一番上はパルム・ドール)に値する作品だと思います。

JK:最高賞、パルムドール受賞の作品「Titan」

立田:パルム・ドールを受賞した映画「Titane」はやはり今年一番の衝撃作です。圧倒的にパワフルでした。

*ジュリア・デュクルノー監督の『TITANE』。女性監督がパルムドールを受賞するのは、『ピアノ・レッスン』(1993年)のジェーン・カンピオン監督に次いでカンヌ史上2人目

JK:9月1日からはベネチア国際映画祭が開幕します。カンヌ国際映画祭の常連だったペドロ・アルモドバル監督が、カンヌをパスしてベネチアにシフトするそうですが、これについて立田さんなりに何か考えることがあるそうですね。

立田: アカデミー賞狙いの作品はますますベネチア寄りの傾向?近年、カンヌとベネチアの作品の取り合いはさらに熾烈になっています。おそらくカンヌでは普通のコンペだったものが、ベネチアならオープニング作品になる、ということでベネチアを選んだのかもしれません。さらに、賞レースを考えるとベネチアもかなり有利です。しかしながら、2019年の「パラサイト」もカンヌですし、濱口さんもカンヌに合わせてきました。やはり監督たちは、最高峰のカンヌにこだわりたい人は多いと思います。

JK:世界各地の映画祭を取材していらっしゃる映画ジャーナリストの立田敦子さん。ベネチアに行かれた際にも出演いただきたいですね!ありがとうございました。