デジタルトランスフォーメーションは、医療分野でもどんどん取り入れられ、治療の可能性を広げています。

医師と患者が、デジタル端末のモニター越しに、症状を診てもらうものもあれば、ソフトウエアを使って、病院に行く外来と外来の間の期間、疾患の予防、管理、治療する、「デジタル療法」が広がっています。こうした中、昨年末には、治療の為に医師が患者に処方するソフトウェアである治療用アプリが日本で初めて誕生しています。ソフトウエアを使った治療用アプリがどんどん増えると、医療はどのように進化していくのでしょう?治療用アプリを開発した株式会社CureApp 代表取締役CEOで、医師である、佐竹晃太さんに伺います。

JK:昨年2020年12月に「ニコチン依存症治療アプリ」が、保険適用され、病院での処方が開始されています。これを治療に利用するためには、医療機関側、疾患のある側、それぞれどのようにして使うことができるのですか?なぜ、このようなアプリが必要だったのでしょうか?

佐竹さん:禁煙治療の場合、病院で診察を受けた時は、医師や看護師から『こんなふうに禁煙したらいいですよ』『こういう生活をしてください』という生活習慣指導を受け、薬も処方をされます。ところが次に病院に行くのが1カ月後ということになると、この間は治療介入ができません。患者さんは1カ月孤独な戦いを強いられ、ついつい1本だけならと手を伸ばしてしまう。こうして途中で挫折してしまうといったケースが多くなります。そこで治療アプリが患者さんに対して心理的なフォローをし、専門的な心理療法を行なうのです」治療用アプリを使う場合、まず患者が禁煙外来に行くところから始まるのは、これまでの治療と変わりません。新しいのはここで医師が治療アプリを患者に処方し、患者さんは自宅に帰ってからも、治療用アプリによって日々、動画やテキストで"禁煙指導"を受けます。

JK: ニコチン依存症の治療の場合、外来で飲み薬、貼り薬を処方されるそうですが、アプリでは、こうした医薬品治療とは異なり、どのような効果が期待されますか?

佐竹さん:ニコチン依存には大きく2つのタイプがあります。1つは身体的依存といって、たばこをやめた直後にくるイライラや、たばこを吸いたいという喫煙欲求です。身体的依存に対しては、飲み薬や貼り薬の禁煙補助薬が効きます。もう1つは心理的依存です。朝起きたらつい1本、ごはんを食べたあとについ1本、休憩がてらについ1本吸ってしまうなど、長年たばこを吸っていた生活によって染みついた喫煙習慣です。この心理的依存に対しては薬が効きませんから、なかなか患者さまは自分の意思だけでは治しきれない、変えきれないという課題がありました。この喫煙習慣に対してアプローチできるという部分が、治療用アプリの最大の強みなので、心理的な部分を治療アプリが日々細かくケアします。

JK: 治療用アプリは、ニコチン依存以外に、どのような疾患の治療に向いているのですか?

佐竹さん:治療用アプリが力を発揮しやすい疾患領域は沢山あります。例えば、高血圧や糖尿病のような生活習慣病、禁煙やアルコールなどのへの依存症、うつやADHDなどといった精神疾患、喘息やがんなど慢性的に管理するものなどがあります。世界各国で様々な疾患に対する治療用アプリの研究開発が行われています。

JK:現在、遠隔医療が進んでいます。たとえば、うつ病の患者さんが仮想現実用のヘッドセットを使うことで、外出している気分になるセラピーもあると思います。CureAppをはじめ、今後、デジタル治療はどんどん広がると思いますが、CureAppの今後の応用についてお聞かせください。

佐竹さん:現状は、生活習慣病や精神疾患などの疾患に対して行動変容をメインの治療用アプリが中心となっていますが、今後は、癌治療マネジメントやリハビリテーションの領域においても広げていきたいと考えています。

株式会社CureApp