今朝は、失われた声を取り戻すウェアラブルデバイス「「Syrinx(サイリンクス)」にフォーカス。世界では毎年30万人以上が癌などの理由で声を失っていると言われています。そんな皆さんは、声帯の代わりに食道を震わせる食道発声法や電動式の人工咽頭機器(EL: Electrolarynx)で声を発しているものの課題や限界があります。声を失った方々に、より手軽に、より元々の声で話すことを可能にするのがSyrinxです。開発を手掛けた東京大学大学生チームのリーダー、竹内雅樹さんと繋がります。

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JK Syrinx、どのようなデバイスですか?

MT 喉元に二つのスピーカーをベルトで固定するハンズフリー型のデバイスです。片方のスピーカーは従来の人工咽頭機器の機能を担い、もう片方はAIを用いて人の声に近づかせる為のアクチュエーターを入れています。

JK 声を失った方々は元々食道発声法や人工咽頭機器で話していますが、Syrinxは、それらをどのように補ってくれますか?

MT 人工咽頭機器は喉に当てなければならず使用するのに片手が塞がり、音も機械音なのがネックになっていました。また、食道発声法は機器なしで話せますが習得に時間がかかります。そのため我々はそれらを解消すべく、ハンズフリーで、発声データもAIのアルゴリズムを用いてより人間らしい声を出せるデバイスを目指しました。

JK 事前に送っていただいた人口咽頭機器とSyrinxによる音声の違いを聴きましたが、Syrinxの方がかなり人間に近いですね。

MT まだ雑音が入っていますが、徐々に人間らしい声に近づいているのではないかと思っています。

JK デザインも鍵となったと聞きました。このデバイスをデザインするのは難しかったですか?

MT 従来のものは機能を重視したがために、どうしても日常で使うものとしてはデザインが不評でした。そこでSyrinxのチームメンバーにも入って頂いたデザイナーの小笠原佑樹さんにお願いし、彼のおかげもあって社会課題ソリューションを競うMicrosoft主催の「2020 Imagine Cup」世界大会で準優勝できました。

JK そもそもなぜこのようなデバイスを作ろうと思ったのですか?

MT 大学在学中に、ALSで声を失った方々を支援する「マイボイス」と言うプロジェクトに参加していたことがきっかけで、将来的に障害を持たれた方々への何かしらの技術提供をしたいと考えました。また、食道発声を教えているコミュニティの練習映像を見て、より人間らしい声を取り戻してあげたいと思ったことも大きな理由です。

JK AIを使って、元々の声を復活させることは可能ですか?

MT 将来的には可能にしたいと思っています。更にはSyrinxをつけて歌うところまで持って行けたらとも考えています。また障害を持たれた方のみならず、健常者の方々にもこのデバイスを何かしらの用途で使って頂き、Syrinxをつけることが特別なことにならないことを目指したいと思っています。

JK 例えばスマホや8ミリで撮った動画から音を拾って合成し、Syrinxに取り込むことは可能でしょうか?

MT きちんと録音するよりはクオリティが下がってしまいますが、動画から音を拾うことは可能です。Syrinxを使って元々の声で話せるようになることも鋭意目指したい次第です。

JK 商品化や法人化など、今後の「Syrinx」の展開はどのように考えていますか?

MT まだ学生プロジェクトで、学生だから得られる支援や参加できる大会があります。それらを有効活用し、今はデバイスの性能を高め磨きたいと思っています。起業してしまうとどうしても事業的な成長性を問われてしまうので、今後そのあたりを勉強しながら進めていきたいです。更に、自動翻訳機能や多言語機能をつけて国際的な展開も考えていきたいです。

JK これからの展開、期待しています!