今朝はヘルメットをかぶらないと自転車乗れない仕組みになっている、ヘルメットと自転車のロックを連動させたシステム「PROLO(プロロ)」についてお話を伺います。

自転車に乗る方は増えているので気になりますね。「PROLO」は子どもの自転車向けなのですが、自転車に乗る際、ヘルメットをかぶると頭が重たいなどの理由からかぶりたがらないお子さんが多い。

そこで、ヘルメットをかぶらないと自転車が動かないように自転車のカギとヘルメットを連動させたシステム。いいアイデアですが、どのように実装させたのでしょう?

この仕組みを開発しているのは、法政大学大学院出身のデザイナー守屋輝一さん、阿部俊介さん、児玉裕己さんの3名ということで、そのおひとり、守屋輝一さんと電話がつながっています。

JK :PROLO(プロロ)の仕組みを教えてください。

守屋 :仕組みは「ヘルメットを自転車のロックにする」というシンプルなアイデアです。反対に、ヘルメットを脱ぐとロックがかかります。子供の自転車走行中のヘルメット着用率の低さに着目し、「ヘルメットを着用しなければ、自転 車のロックが解除されない」という仕組みを採用したスマートロックです。

安全性を追求したヘルメットの開発は進んでいますが、そもそも着用することを促す製品はありません。普段の行動 の中にトリガー(連動システム)があるため、親御さんにとっても強制感なく、お子様にヘルメット を着用してもらえます。

JK 技術的にどうなっているのでしょう?

守屋 :ヘルメットのベルト部に赤外線LEDとフォトトランジスタが取り付けてあり、照射した光を頭部 が遮ることで、ヘルメットの装着を検出します。走行中は内蔵されたセンサが加速度のブレを検知 し、ロックがかかることを防ぎます。

また、PROLOは親が子供に向けて使用する製品のため、強制感を出さないことが重要です。子供が「使ってみたい」と思えるように外観や動作にもこだわることで、「子供が自らの意志で安全を実現していく」サポートをしていきます。

※これらのシステムおよびプロダクトは、既に持っている自転車とヘルメットに取り付けて使用することができます。

JK ということは、このための自転車やヘルメットが必要なのではなく、お持ちの自転車に導入できるということなんですね! PROLOというのはどういう意味なのですか?

守屋 ProtectとLockを掛け合わせた造語です。

JK なるほど。どういう、いきさつからヘルメットと自転車を連動させることを思い立ったのですか?なにが きっかけですか?

守屋 元々、子供と親子の関係性の変化に注目していました。私の体感ですが、親が子供に対して、昔より強くものを言えないようになってきている気がしていて、そういう両者の距離感が、社会課題 に結びついている場合があるのではないかと思っていました。

そんなある日に、私(守屋)の自宅の 近所の子供が親にやんわりと「ヘルメットを着けて行きなさい」と指摘され、渋々着用したが、 私のところにきて「ヘルメット外しちゃっていいかな」と声をかけてきたことがありました。こ の状況こそ、親子の関係性の変化が顕著に現れている一例だと思い(昔からそうだったかもしれな いが、今だからこそ取り組むべき)、デザインの力で何かできないか考えることにしました。

JK :欧米は自転車がそもそも法規上車道を走るもの。歩道を走ってはいけないですよね?だからヘル メットも着用します。

守屋 道路交通法で、自転車が車道を走らなければいけないのは日本も同様ですが、13歳未満の幼児や 児童に関しては、ヘルメット着用は「努力義務」となっており、「最大限努めるべき」という啓 発に止まっています。

人間誰しもが怠惰な部分を持っており、なかなかヘルメット着用が浸透しな いということが言えます。 また、今回のコロナ騒動で改めて浮き彫りになりましたが、日本の法律はその性質上、拘束力が ない場合が多いです。

だからこそ、PROLOのように法律で強制できない部分をカバーするような 仕組みが、今後もっと必要になりますし、それは本質的に「行動を強制しない、人に寄り添った ものづくり」こそ日本の価値観であると世界に向けて発信できる可能性を秘めていると考えてい ます。

JK 日本人ならではの、心遣いから生まれた仕組みなんですね!

JK :PROLOは現在、子ども用のようですが、単純に大人用にも応用できますか?

守屋 PROLOの仕組みとは一言で、「ヘルメットを自転車のロックにする」という大変シンプルなもの で、相手を選びません。対象年齢に縛られることはなく、大人が使うものにも技術の転用は可能 だと考えています。

JK :今後、シェアバイクの形で街中で多数の人が一つのバイクを使うケースにも応用できるのでしょうか?

守屋 PROLOにおける本質的な革新とは「仕組みを作り出した」ことにあります。「仕組み」ですから、 各分野に転用が可能ということです。もちろん、シェアサイクルにおいて「ヘルメットをしなければロックが開かない」のもそうですし、シェアキックボードにおいて「ヘルメットをしなければ アクセルが踏めない」、オートバイにおいて「チェストガードをしなければアクセルが踏めない」 といった活用方法もあり得るなど、この仕組みを普遍的なものにしたいと考えています。

JK :そのためにはクリアしなくてはいけない技術、課題は?

守屋 連動システムの技術的な課題よりも、素材や部品面での課題が顕著です。市販のものでは、各部品 のサイズやクオリティに限界があり、実験できない部分があります。また、それにより外装のデザ インも変わってきます。しかし、製品全体で最新テクノロジーを使用せず、既存テクノロジーを組 み合わせることで開発コストや開発スピードに優れた設計となっているため、社会実装に向けた 障壁はそこまで高くないと考えています。

今後は、スタートアップ企業を起ち上げ、メーカー企業と連携をしていくだけでなく、クラウドファンディングを通じての資金調達をすることも検討しています。

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