JK 今、環境に優しいということもあり注目されているのが水素エネルギー。これまで、水素エネルギーは天然ガスから抽出されていましたが、その過程で炭素が発生するのが問題となっていました。そんな中、再生可能エネルギーを用いる「グリーン水素」が救世主ともなりうると言われていながら、価格が高いことや技術不足がネックとなっていました。

ポストコロナ、コロナ後の世界ではエネルギー業界への多額の公的資金注入・投資により、グリーン水素の普及が急速に進むと言われています。

ヨーロッパ、特に水素政策のグローバルリーダーになろうとしているドイツの状況について、ドイツのシンクタンク、アゴラ・エネルギーヴェンデ(Agora Energiewende)のマティアス・ドイチェさんとコネクト。

JK 水素生成にはエネルギーが多く必要ですが、実行可能ですか?そして環境にどのように優しいのでしょうか。

MD 現時点では、水素は主に化石燃料から生成されていて、環境に負荷がかかっています。再生可能エネルギーを使って持続可能なサイクルで水素を生成すればこのような問題解決します。ドイツでは、循環型で生成するグリーン水素の採用が推奨されています。

JK 風力発電から引くケーブルや、グリーン水素を実際に生成する工場、そしてエネルギー貯蓄設備など、インフラは鍵となりますよね?

MD インフラを整備しないと意味がありません。グリーン水素に必要な各種ポイントをサイクル型で繋げていくこと、そして先行投資等の入念な準備が必要不可欠です。また、ドイツにはガスパイプラインのグリッドがありますが、そのような既存のインフラを水素用に変更することで環境的・経済的な負荷を抑えることが出来ます。2050年までに二酸化炭素正味排出をゼロにするため、各所でインフラ作りが始まっています。

JK 今週、ドイツ政府の水素戦略内容が新たに発表されると聞きました。

MD そうです。資料によれば、水素戦略でグローバルリーダーとなるべく大きなシフトをすると主張・宣言しています。5GWのグリーン水素によるエネルギー出力を2030年までに実現します。水素戦略全体で90億ユーロの予算を投じて、20億ユーロを国際連携に使う予定です。鉄鋼を始めとする多くの業界でも水素を使用する方向にシフトすることで国際的な競争力を高めていくようです。

JK ドイツ国民は巨額の政府予算が投下されることにどう反応すると思いますか?

MD 水素戦略はコロナ後の経済成長を促す大きな柱の一つということと、予算総額のほんの一部ということで、国民に認められると思います。

JK 水素エネルギーの未來において日本はどのような立場を取ると思いますか?

MD 需要の面では日本は進んでいると思います。燃料電池や、ガスタービンに使用する天然ガスを水素に変換するノウハウは持っている。一方で、供給面はドイツなどに倣ってインフラ作りを進め、どう供給を強めるかが課題となるでしょう。

JK 今回のコロナ禍で空気が綺麗になった例もありましたよね。そのような状況を維持するためにも、今後のエネルギー事情、水素事情にも注目です。

エネルギーシンクタンク Agora Energiewende(ドイツ)

ドイツにおける水素戦略概要(2020年6月10日時点)