今朝は、アメリカ・イリノイ州シカゴにありますノースウェスタン大学のジョン・ロジャーズ教授とつながります。

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ロジャーズ教授は生物医学工学(Biomedical Engineering)が専門。今回新型コロナウィルスの患者を効率よくモニターする為のデバイスを開発しました。これは元々、脳卒中で治療中の患者さんをモニターするために使用していたデバイスをカスタマイズしたものだそうです。どんなデバイスで、どのようにコロナ患者をモニターするのでしょうか。まずは、現在のシカゴでの新型コロナウイルスの感染状況について伺いました。

シカゴの状況は安定し始めています。現在まで累計およそ5,500名の死者が出ていますが、それも徐々に減ってきています。ここ3ヶ月は大学の研究所もロックダウンの対象でしたが、私の研究が新型コロナ流行に直接関係するとして必要とみなされ、私自身はロックダウン中も毎日研究所に通っています。

今回コロナ患者をモニターするデバイスを開発されたとのことですが、どのようなデバイスですか?

普段我々は生物医学にまつわる様々デバイスを研究しています。今回開発したコロナ患者用デバイスは元々脳卒中患者のリハビリをモニターする為のものでした。脳卒中の患者さんは脳ダメージから回復する過程で、「飲み込む」、「喋る」、などの動作を再度学習します。過去数年間にわたり研究を重ね、喉元の下と、鎖骨の間あたりの胸骨上窩(きょうこつじょうか)と呼ばれる場所に貼る、バンドエイドのようなデバイスを開発しました。この胸骨上窩という場所は様々なデータを計測するのに最適とされています。

どうして脳卒中で治療中の患者さんのためのデバイスが新型コロナウイルスの患者にも適応できると思ったのでしょうか?

モニターすべき症状やデータがコロナ患者と脳卒中患者で共通していたことから、このデバイスをコロナ患者に使えるのではないかと、過去に一緒に仕事をしてきた臨床医からの提案がキッカケでした。医療従事者たちの現場からの声は大事です。

実際にこのデバイスはどうやって使うのでしょうか?

患者さんは細かいデバイス操作のことを考える余裕はないですし、医師や看護師にとっても操作の負担が抑えられることが重要です。デバイスは柔らかいシリコンゴム製の素材でカプセル化されていて、バンドエイドのように簡単に肌に付着するデザインになっています。ワイヤレスで充電され、遠隔操作もできます。操作は基本的に全て自動化されており、デバイスは喉元に貼られると記録を始め、剥がされて充電パッドに繋げられると記録を止めます。記録されたデータはクラウドに転送され、アルゴリズムを使用して分析され、医師・看護師たちがひと目で状況把握をできるダッシュボードが作成されます。この一連のサイクルが繰り返されます

最後に、このコロナ患者用モニターデバイス、今後の展望を教えて下さい。

沢山集めた患者のデータに機械学習やAIを用いて、より精度の高い新型コロナウイルス患者専用のデバイスにできると思っています。例えば、咳の回数だけでなく、より高度なアルゴリズムを利用して具体的にどのような咳なのか等を分析していけるはずです。

コロナのワクチンが近い将来開発されることを望んでいますが、しばらくはウィルスと付き合っていくことになると感じています。引き続きこのデバイスを量産して広め、デバイスから得られる大量のデータをどのように活用していくかも考えながら、未来に向けて最先端の研究を進めていきたいです。

新型コロナウイルスの患者、そして医療従事者にとっても非常に役に立つこのデバイス。今後の展開にも注目です。

https://www.mccormick.northwestern.edu/research-faculty/directory/profiles/rogers-john.html