今週は、子どもの虐待に至ってしまった親に対してその回復を支援するプログラムを開発、実践している一般社団法人 「MY TREE」に注目します。

このプログラム、開発するきっかけは、2000年に施行された 児童虐待防止法でした。「MY TREE」の代表理事、森田ゆりさんは当時をこう振り返ります。

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出来上がった法律は、私が願っていたものとはかなり違ったものとなりました。
いくつもの点でそうだったんですけれども、1番大きな点は、児童相談所の役割を強化して、子供虐待が起きていそうだったらそれに介入して子供を救出する、そのプロセスを作るということが主眼だったんですね。
私は、長年、もうすでにその当時で15年以上アメリカの子ども虐待対策課で仕事をしてきたので、それでは虐待はストップできないと。子どもを救出する、もちろんそれは必要なんだけれども、その虐待をしていた親にどう関わっていくのか、親がどう回復していくのか、それを視野に入れた法律を作っていかなければ問題は何も解決しないと考えていました。
でも、法律がなくても、そういうプログラムをやっていけばいいんだと。 

森田さんは、虐待をしてしまった親を回復に導くプログラムを開発。2001年から、まずは母親向けに実施。2021年からは父親向けのプログラムもスタートしました。

週に1回、およそ2時間のセッションが4ヶ月にわたって行われます。そして このセッション、母親向けと父親向け、内容の多くは同じなのですが、一部、違っている点があります。例えば、、、

1つは、父親の方がなかなか自分の弱さを出せないんですね。すなわち、自分の本当の気持ちをこういう場に来てもなかなか語れないと。
そして、泣けないできた人生があります。泣くことを許されないできた少年たちが大人になっている。泣くってものすごく重要なことなので、泣くセッションというのを父親の方はあえて入れています。泣くって素晴らしいことなんだということを学ぶ。そして、自分自身も自分の人生を振り返ってみる。そういうようなセッションがあるんです。

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これまでに プログラムを修了した方は、母親が1632人、父親が31人。(実施している期間が 母親向けのプログラムの方が長いこともあり、こういう数字になっています)

森田さんは、「プログラムを受けることで、母親も父親も大きく変わっていく。それを見るのは本当に嬉しいことだ」と語ります。

しかし...活動の中、課題と感じているのは、最初にお話があった、法律のこと。

2000年の児童虐待防止法の時に法律の中に入れることができず、その後25年経っても今もできないそのことです。どういうことかというと、その虐待ケースを、大変なケースだったら、児童相談所が子供を一時保護する。さらに施設入所させる場合もありますよね。そうやって、虐待をしている親から子どもを引き離すわけですね。
でも、どういう風にしたらその家族をもう1回元に戻せるのかっていうところがものすごく弱いんですね、日本は。もう25年経っても。だから、それは悲惨ですよ、子供にとっては。子供はずっと待ってますから。もちろん親から暴力振るわれるのは嫌、そういうお父さんは嫌、そういうお母さんは嫌。でも大好き。でも親が変わらなきゃ、子どもを返せないんですよね。
そういう時に、裁判所がそれを法的に親に直接命じる回復命令というのがもう不可欠なんですね。 

法律の整備、ぜひお願いしたいです。MY TREE」が提供するプログラムは全国各地の様々な団体で実施されています。そのリストは「MY TREE」のウェブサイトに掲載されていますので、そちらをご覧ください。また、このプログラム、参加する親の受講費は無料となっています。この活動を支える寄付も募られていますのでこちらへのご協力も お願いします

MY TREE