今日は、「クロスプレイ東松山」と題して行われている、このプロジェクトをご紹介します。こちらは、デイサービス楽らくを運営する「医療法人 社団保順会」と、アートにまつわるプロデュースやマネジメントを行う「一般社団法人ベンチ」が一緒に実施しているプロジェクトです。
「デイサービス楽らく」の施設長で、ご自身も以前、パフォーミングアーツやアートフェスティバルのマネージメントの仕事をされていた武田奈都子さんに、まずは、このプロジェクトを始めるきっかけについて伺いました。

介護現場を見ていて、すごく豊かなケアって、イマジネイティブな部分、想像力が豊かなケアというのがとても素晴らしいなと思って。デイサービスの現場を見たときに、自分が思っていた介護というものの概念、見方が変わった瞬間があって。何かをしてあげる、お世話をしてあげる、ということではなくて、ひとりひとりに寄り添うようにいいケアをしている職員というのはすごくクリエイティブで、すごくイマジネーションが豊かだな、ということを感じました。その時に、自分がやってきたアートというものとの親和性があるんじゃないかなということを思いまして、こういった介護施設、福祉の現場にアートを入れることによってより豊かなケアの現場ができるんではないかなと思って、こういったプロジェクトができないかな、という風に考え始めました。
2022年に「デイサービス楽らく」が施設を移転するタイミングでアーティストが滞在できる施設をもうけ、アーティスト・イン・レジデンスの取り組みが始まりました。これまでに参加したアーティストは、13人と2組。演劇、ダンス、美術、彫刻、短歌 など様々なジャンルのアーティストが 3週間から4週間ほど滞在して、創作活動をおこなってきました。例えば、文化活動家のアサダワタルさんは、こんな活動をされたそうです。

この方は、デイサービスの中でラジオ番組を、そこでしか聞けない、デイサービス楽らくでしか聞けないラジオ番組、架空のものを始めまして、音楽をきっかけに利用者さんからエピソードを聞くという、少し回想法と呼ばれるものに近いかもしれないんですけれども、利用者さんも、音楽と記憶って結構密接に繋がるところがあって、音楽とそれにまつわるエピソードを利用者さんに聞いて、それをちょっとラジオっぽく仕立てるという、そういった活動を何日間かやって、で、その後、職員の一言で「楽らくの歌を作ってください」とオーダーされて、もうほんとにあっという間に作詞作曲、2曲作ってくださったんですけど。作詞も、そのラジオ番組を通して利用者さんからいろんなエピソードを聞いていたので、すぐに詞ができたそうなんですね。
今、お送りしているのが、アサダワタル作詞作曲の『また明日も楽らくで』という曲。施設の利用者の皆さんと地元の小学生が一緒に歌った、というヴァージョンです。この曲、ミュージックビデオもありますので皆さんもぜひご覧ください。高齢者の皆さんと子どもたちが一緒に歌うシーン、素敵です。

最後に、、、アーティスト・イン・レジデンスのプロジェクトが始まってから3年。ここまでの取り組みで、どんなことを感じてらっしゃるのか?武田奈都子さんに 伺いました。
福祉とアートが融合するということに関して、融合するポイントというものはお互いにやっぱり理解を深めていかないとなかなかなか難しいなとは思いますね。
ただ、認知症になっても、老いても、やっぱり人間には最後、感情というものがあって、感情を表現できる場所だったりとか、自分を表現できる場所というものが介護施設の中にあるというのは、すごく大事なことなんじゃないかなっていう風には考えています。
このプロジェクトに参加したアーティストの滞在日記が、インターネットで公開されています。興味をお持ちになった方は、こちらもぜひご覧ください。
お話は、「デイサービス楽らく」の施設長、武田奈都子さんでした。