今週水曜日に発表された国外からアメリカへの輸入にかかる関税率。最初の発表から紆余曲折があり、現時点では8月1日から課税する、というアナウンスがトランプ大統領からありました。

今朝は、第一生命経済研究所の藤代宏一さんに回線を繋ぎ、今までの経緯とこれから、そして日本経済に与える影響についてお話を伺います。

Q 参院選を前にトランプ関税の行方が混沌していますので、状況を整理します。 交渉が長引いてますよね?いまどんな状況ですか?

A これまでの動きを整理すると、まず3月に鉄鋼とアルミニウムの関税を全世界に対し25%に引き上げました。その後、国に関係なく、自動車に対して25%の関税をかけると発表し、現在もそこは変わっていません。そして驚きだったのが4月2日、全ての貿易相手国に対して、かなりの高関税を適用すると発表し、日本は24%でした。ただその直後、世界的に株価が暴落したり、米国債が売られ、金利が上昇したりしたことから、トランプ政権は関税の引き上げを7月9日まで先送りすると発表しました。

その期限が間近に迫っていた7月7日になって、今度は8月1日までに交渉が合意に至らない場合、関税が25%になると米国側が通告してきました。したがって、現在は25%の関税を引き下げる交渉の最中です。

Q TACO(トランプ氏はいつも土壇場でビビってやめる)という批判もありそうですからね

A 個人的には、日本からの輸入品に対して一律かかる24/25%の関税は10%台くらいまで引き下げられると思います。ただし日本側が譲歩を狙っている自動車に関しては25%の関税がそのまま適用されることを覚悟しておく必要があると思いますし、そう予想している人も少なくないと思います。米国からみて貿易黒字国である英国に対しては、一定の台数まで関税をかけない措置がとられましたが、日本車は規模が大きいだけに譲歩を引き出せないのではないかとも思います。こればかりはトランプ大統領の一存で決まることなので、よくわかりませんが、雲行きは怪しいと判断せざるを得ない状況です。

Q 日本企業・経済に与える影響はどうなのでしょうか?

A  個人的には楽観視しています。まず、第一に、かつての1970‐80年代における、日本の貿易黒字は、日本からの輸出製品が多過ぎて、アメリカの産業が痛み、失業率が上がってしまっていたことで、日本が標的になっていました。しかし今回の一番の標的は中国ですし、その他の国に対して一律に関税を引き上げるとしているという点が重要です。日本製品だけに関税がかかるのではありませんから、条件は競争相手である中国、韓国、台湾、ドイツを筆頭とする欧州諸国と同じです。

そうなると、関税が引き上げられても、各国の企業が一斉に米国の消費者に価格転嫁すれば、日本企業だけ競争力を失うという事態には至らないと思います。

特に自動車など生活に欠かせない品目でそうした傾向になるのではないでしょうか。その場合、短期的には収益が圧迫されそうですが、関税の影響はあまり大きくはならないと予想しています。その意味においては、日本の関税率が他国に比べて高くならないことが重要です。