「買い物で転倒は誰のせい?」(日本経済新聞)
スーパーで転んでけがをしたのは、床が滑りやすかったのか、不注意からなのか。
近年店舗内の転倒事故をめぐって、負傷した客が店に損害賠償を求める訴訟が相次いでいます。訴えを認める判決もあれば、退ける例もありますが、トラブルを避ける上で店側には小まめな清掃や、危険箇所の把握が求められています。
神奈川県のスーパーでサニーレタスが並ぶ特設売り場を通り掛かった男性(63)が転倒、左ひじを骨折。「床が水浸しで滑りやすかった」とスーパー側に約1億円の損害賠償を求める訴えを起こました。東京地裁判決は「一定の間隔で清掃するなど転倒を防ごうとした形跡がうかがえない」と判断し、休業補償を考慮しておよそ2100万円の支払いを命じた。
東京都内のスーパーが訴えられたケースでは、来店した客が店内に落ちていたカボチャの天ぷらで足を滑らせたと主張。東京地裁の一審はスーパー側の賠償責任を認めましたが、二審では「転倒が起きたレジ前に天ぷらのような商品を利用客が落とすとは想定しがたい」として逆転敗訴として客側が上告しました。
「事故で店側が失う社会的信用は大きいにもかかわらず、交通事故などに比べて転倒の危険性は十分に認識されていない」という専門家の声もあります。
厚生労働省の人口動態調査によると、2020年に平らな場所で転んで亡くなった人は7782人で、交通事故死のおよそ2.1倍。10年時点から6割増え65歳以上が96%を占めるなど、高齢化に伴い転倒が重傷や死につながるリスクは高まっています。