「ポスト終身雇用、会社と退職者との関係変化」

終身雇用が標準的な日本では、定年前に自己都合などで退社した社員は、「裏切り者」扱いされることも少なくありませんでした。仕事の新陳代謝が激しくなるなか、日本でも終身雇用の限界が見えはじめ、転職も増加。

優秀な人材と退職後も結びつき、協業するメリットの方が大きくなりました。

英語で「元社員」は卒業生を意味する「アルムナイ」と呼ばれています。転職が活発なアメリカでは売上高上位500社の98%が何らかのアルムナイ向けの制度を持つという調査があり、「アルムナイネットワーク」と呼ばれる交流組織が重視されています。

コンサルティング大手のマッキンゼーはアルムナイ向けの専用サイトを持ち、世界中でおよそ3万4000人が、年100回以上の懇親イベントを開いています。お互いに起業を支援する、強力な人脈には定評があります。

三井物産ではアルムナイ組織の「元物産会」が活発。中途退職者が情報交換し励まし合う目的で10年前に発足し、近年は若手中心に新興企業などへの転職が増えて会員も500人超に達し、それぞれの新事業の発表など交流が盛んです。

大手広告代理店の電通は最近新会社を設立、早期退職した社員に業務を委託するという仕組みを作りました。元社員は全員が電通が設立した新会社との最長10年間の業務委託契約を結び、仕事を請け負います。また独立してから立ち上げた事業については、協業なども行います。