ここからは商品ジャーナリストの北村森さんに、生活経済の観点から解説していただきます。今朝は「界隈消費のマーケティング」についてお話をお伺いします。

J.K. 「界隈」という言葉はよく耳にするようになりました、本来の意味~その辺り一体~実際の区画、エリアという意味では無いんですよね?

北村: SNSを起点としたゆるやかな集団で、それぞれの趣味=好き=によって形づくられるのが「界隈」です。推し活、ファッション、アニメ、ゲームなどから使われはじめましたが、職業(働き方)や子育てなどにも使われ始めて、昨年の秋に、博報堂とSHOBUYA109.labが「界隈消費」のレポートを発表。

J.K. 消費行動が変わりつつあるということですね

北村: 高度成長期における大衆の時代→1980−90年代の分衆の時代→ネット、SNSの定着による個の時代を経て、現在の界隈の時代という分析です。好きな領域でゆるっと繋がりやすい環境が根付いたことが背景にあります。ジェンダーや年齢、所得水準では計り知れないのが特徴といえそうです。

J.K. 具体的な「界隈」関連の事例で、北村さんがユニークだと思われたものは?

北村: 2021年から2022年にかけてブームを形成した「紋別タッチ」。航空マニアが3万人以上つながっているSNSから広がったムーブメント。コロナ禍による客数激減で航空路線廃止の危機に見舞われた北海道・紋別の地元関係者が航空マニアに、紋別にぜひ来てほしいとお願いしました。その熱意に共感を寄せたマニアたちは紋別を救おうとSNSで情報を広げ、こぞって羽田―紋別便に搭乗し、1万人ものマニアがして搭乗率を大きく引き上げました。消費者をも巻き込んで、共感の渦を広げることが大切という話です。

J.K. となると企業の側からすると「マーケティング」のターゲットは難しそうですね。

北村: 「共感のマーケティング」が重要といわれています。つまり企業の論理を押し付けないことです。界隈の人はそれを敬遠する。商品が売れるには、とかく、物語・ストーリーが必要とされがちだが、それを紡ぐのはあくまで界隈の人(=消費者)であるべきで、そうでないと共感は広がりません。企業はその点を踏まえるべきかもしれないですね。