ここからは日経BP総合研究所客員研究員の品田英雄さんに、街角などで見かける「応援広告」について解説していただきます。

J.K. 駅の通路などで、広告をバックに写真を撮っている人をよく見かけますね

品田: 主にアイドルを応援する1つの手段として、駅や街の大型ビジョンなど出したい広告枠をファンがお金を出して抑えるというもので、今では毎週ように都内のどこかに「応援広告」が出ています。ポスター1枚が1週間の掲示で3万円から10万円という価格で、市場規模は昨年が推計377億円とされて大幅に伸びています。

J.K. こうした「応援広告」はいつ頃から始まったのでしょうか

品田: もともと韓国が起源のムーブメントで、韓国語で誕生日という意味である「センイル」広告として始まりました。日本の広告業界では「応援広告」と呼ばれて近年はすっかりポピュラーになりました。日本は2019年ごろから、韓国のアイドルオーディション番組の上陸をきっかけに広がっています。

J.K. CDリリースでレコード会社が広告を出すのではなくファン主導なんですね。

品田: アイドルの誕生日や周年記念だけでなく、イベントの開催祝いとして、その会場近くの駅や会場のビジョンに応援広告を出すファンの人々もいていかにその範囲が拡がっているかがわかります。例えばライブ会場の最寄り駅に、複数のファンの団体がツアー開催のお祝いの「応援広告」を掲出した事例もあります。ライブ会場に行くまでに気持ちが高まるという狙いですね。

J.K. アーティスト写真などの肖像権についてはどうなっているのでしょう

品田: 応援広告を出したい「推し」のアーティストやアイドル、VTuberなどには肖像権や著作権があるので、無断で広告は出せません。「応援広告」は、まずマネージメントサイドである事務所の許可を取り、駅や大型ビジョンなど出したい広告枠を抑えるという段取りが必要です。しかし「応援広告」に特化した手続き代行パッケージも用意され、スマホで購入できるようになって簡便になっています。

J.K. 今後の「応援広告」はどのようになっているのでしょうか

品田: デジタルサイネージや車内広告のジャックする「推し電車」など高額プランも用意されています。そして応援といえばやはりスポーツですから、アイドルだけではなくスポーツの分野でも広がっていくのではないでしょうか。