.K.: リモートもあって、毎日出社する必要がないオフィスが増えていますね。
加谷: 従来型のオフィスとは異なる新しい形態のオフィスには、大きく分け2つの種類があります。ひとつは、オフィスフロアに複数の会社が部屋や机を持ち、共有の会議室などを備えた、いわゆる「シェア・オフィス」、もうひとつは、実際にはオフィスとしての機能はなく、住所だけを提供する「バーチャル・オフィス」です。コロナ危機をきっかけにリモートワークが進展し、シェア・オフィスはかなり一般的になりましたが、このところ特に伸びているはバーチャル・オフィスの方です。
J.K.: 住所だけ、自宅ではなく、それ以外の場所を会社にするのはなぜでしょう
加谷: これまでフリーランス・自営業者、あるいは中小企業の経営者は、自宅の住所などで登記することも多かったのですが、都心でない住所の場合、イメージがあまりよくないことに加え、結果的に自宅の住所まで公開されてしまうことになります。バーチャル・オフィスであれば、見かけ上は都心の一等地に住所を持つことが可能となります。バーチャル・オフィスが集中するビルの場合、ひとつのビルに2500以上の法人が入っているという例もあります。
J.K.: そこで営業実態がない会社が複数あっても、法的な問題はないのですか
加谷: 法的にはまったく問題ありません。超一流企業で、実際のオフィスは大手町にあっても、登記の住所は創業した場所のままというケースもあるくらいです。ただ最近は日本経済の低迷が続いていることから、事務所に十分なコストをかけられなくなり、こうしたバーチャル・オフィスが普及しているという背景もあります。副業せざるを得ない人も増えてくると予想されますから、今後、バーチャル・オフィスはさらに拡大するかもしれません。
J.K.: とはいえ消費者の立場から言えば、問題になるケースもありそうですね。
加谷: トラブルになった場合に、登記上の住所には誰もいないので、訪ねてもラチがあかないケースも考えられます。オフィスがあれば、トラブル時に対応してもらえるとは限りませんが、ITの発達で、オフィス不要の働き方が可能となっていますから、登記や企業情報公開など法的な面も実態に合わせた変化が必要かもしれません。