J.K.: まずは「百貨店友の会」とは、どんなものでしょうか

北村: 一般的なのは、毎月1万円ずつ1年間積み立てると、1年後に1万円がプラスされて、12万円でなく13万円となり、その金額分をその百貨店の買い物で使えるというもの。実はその歴史は古く、大正時代に鹿児島の百貨店が始め、大手百貨店にも広がっていった。ほぼ100年の歴史で、現在日本百貨店協会のサイトによると、100以上友の会があるとのこと。

J.K.: 利息に換算すると年利8%以上となるので、かなりお得ですね

北村: 今注目されているのは高島屋の取り組み。入会手続きや毎月の積立をスマホアプリで行える仕組みを整え、20代などの若年層を掴み、新たな世代の百貨店ファン獲得につなげようとしている。また熊本市の鶴屋百貨店は、顧客向けに意欲的なメールマガジンを社内で自ら制作するなど、老舗ながら存在感を今も放っている。人間ドックの利用ワインのサブスクといったサービスもラインナップに加え、注目を浴びている。

J.K.:小売業の中で百貨店の存在意義が様変わりしている中で興味深いですね

北村: 現金で戻るのではなく百貨店で使うのが基本だが、連携する家電量販店などでも積立金を使えるというケースもみられるので、調べてみる価値はありそう。多くの百貨店では旅行優待などの特典をつけているケースも多い。

J.K.: いいことずくめではないかも知れませんが今後はどうなるでしょうか

北村: 百貨店が倒産したとか、売却となった場合に、積立金の返金率が100%に満たなかったケースも実際近年にあった。その点だけは踏まえるべきだが、この時代、友の会の活用が、賢くお金を使う選択肢のひとつにはなりえる。衣類や家電以外にも、食事に使うこともできるし、積み立てた金額分の使途はけっこう広い。百貨店にとっては、ほぼ100年を迎える友の会の仕組みを生かして、消費者の共感を呼ぶサービス内容をどう構築するかが、ここからさらに問われてくるはず。「より安く、便利でラクに」という以外の要素にも買い物の楽しさや満足感を得られるということを、百貨店がどうアピールできるか、まさに真価が問われている。

J.K. 商品ジャーナリストの北村森さんでした。