今週は経済評論家の加谷珪一さんに、「今後の五輪開催地」について解説していただきます。

J.K. 気の早い話ですが2030年と34年の冬季五輪の開催地が決まりましたね。

加谷:IOC(国際オリンピック委員会)はこのほど総会で、2030年の冬季五輪をフランスのアルプス地域、34年はアメリカのソルトレークシティーで開催することを決めました。しかしフランスについてはフランス政府が財政保証することを条件とするなど、状況は流動的です。

J.K. そもそもオリンピックの招致がその昔のような盛り上がりは見られません

加谷: 1984年のロス五輪をきっかけにオリンピックの商業化が進んできたと言われています。スポーツは典型的なマスを対象としたイベントであり、運営者にとっても、スポンサーにとっても、そして開催国の国民にとっても、大きなメリットがありました。ところが、近年、スポーツの世界にも多様化の波が押し寄せており、巨大な大会を開催することのメリットを享受しにくくなっています。今回、アルプスでの開催に対して、フランス政府が財政保証を躊躇したのは、オリンピックという国際イベントが曲がり角に来ていることを象徴しています。

J.K. 2028年ロサンゼルス,その次の2032年オーストラリアのブリスベンは決まっていますよね

加谷: 今回の2024年大会には、複数の候補地が立候補を予定していましたが、撤退が相次ぎ、最終的にはロサンゼルスとパリだけとなりました。辞退した都市の多くは、住民の反対や費用などの問題などを抱えており、以前のようにオリンピックであれば、無条件で招致するという状況ではなくなっています。

J.K. 日本が再び開催するという話も出ているようですね?

加谷: IOCのバッハ会長は、日本の国際大会の運営能力などを評価し「近い将来、また冬季大会などの開催地になるだろう」と発言しています。歓迎する声がある一方、お金ばかりがかかる五輪はもうコリゴリという意見も国民からは多く聞かれる状況です。いずれにせよ、アスリートファースト、開催地の国民ファーストでなければ理解は得られないでしょう。