今週はITジャーナリストの三上洋さんに、[磁気テープの希少記録に消滅危機] というニュースについて解説していただきます。
J.K.: ビデオやオーディオ・テープなどを再生する機会がすっかり減りました。
三上: 今はハードディスクなどに、データ保存するというスタイルが主流です。VHSなどのビデオやカセットテープ類など、いわゆる磁気テープなどが、ひと昔前のメイン記録媒体でしたが、これらが消えてなくなってしまう、と考えられているのです。これらはユネスコなどが2025年までにデジタルデータ化しないと大半が永遠に失われてしまうと警鐘を鳴らしています。
J.K.: 2025年といえば来年じゃないですか
三上: 磁気が劣化することもあり、テープ自体の問題もありますが、それよりも再生機器の製造や保守整備。すでに再生機器の保守サービスが終了している場合が殆どで、修理部品が手に入らないというケースもあります。言わばこれらのアナログメディアがロストテクノロジーになってしまうという危険性があるんですね。実はそれ以前の映像は8mmなど古いフィルムに保存されていて、これらは適切に保存すれば長持ちして再生も可能です。しかし1970年代から2000年ごろまでの、家庭用ビデオが普及した時代のものが問題なんです。
J.K.: アーカイヴなどで保存するような気もするのですが
三上: 磁気テープのデジタル化は、映画やテレビ番組など一般に公開されたものは確かに少しずつ行われています。ただ個人や研究者が収録した地方の方言や民話などで、特に沖縄各地の方言やアイヌ語など、すでにネイティヴスピーカーが少数となったものは、倉庫や押し入れの奥などに眠っていたりして、そのうち救えない時がやってくる可能性があります。
J.K: 今後はどうなるのでしょうか。
三上: 文化庁ではデジタル化の予算を設定。国立映画アーカイブでは対策を考える緊急フォーラムを開催。とはいえ撮影収録した個人がデータ化できるうちに救出することが必要。私たち個人が持っているビデオテープ、カセットテープも寿命は20年から30年と考えて、デジタル化して保存するなどの対策が不可欠でしょう。