今週は経済評論家の加谷珪一さんに、「日本版DBS」の話題について解説していただきます。

J.K. 「日本版DBS(Disclosure and Barring Service)」ようやくスタートですね。

加谷: 子どもに接する仕事に就く人に性犯罪歴がないか確認する制度で、学校や保育所、学習塾など、子どもに関わる施設で性犯罪が相次いでいることを受けて議論が進められてきました。内容はイギリスにおけるDBSを参考に作られており、開催中の通常国会で成立する見通しです。

J.K. 同じ性犯罪を別の職場で繰り返す、ということがなくなりそうですね

加谷: はい。事業者は従事者の犯歴を照会することになるので、性犯罪者が別の事業所に前歴を隠して入ることはかなり難しくなります。

J.K. 認定制度は全ての職種ではなく、限られているわけですね

加谷:学校や保育所などには確認を義務づけますが、学習塾や塾などは一定の条件を満たした事業所のみが対象です。またフリーのベビーシッターなどは法律の対象外となっています。対象範囲は広い方がよいのですが、実務上の負担に加え、犯歴というデリケートな情報を扱うという現実を考えると、むやみに対象を広げることも簡単ではないという事情があるようです。

J.K. 将来的な制度の普及などについての課題はいかがでしょうか

加谷: 2つの面があります。ひとつはこうした制度があったとしても、初犯は防ぐことができないという点です。性犯罪の加害者の多くは初犯ですから、この制度があれば絶対安全というわけではありません。国民もこの点については理解しておく必要があるでしょう。もうひとつは、個人情報の扱いということになるでしょう。万が一誤った情報が流れると、その人の人生をすべて壊してしまうことにもなりかねません。情報の取り扱いだけは完璧を期さないと制度そのものへの信頼が揺らいでしまいます。マイナンバー制度でも政府が運用するシステムのセキュリティが問題視されています。漏洩などないよう政府は全力を尽くすべきでしょう。