今週は経済評論家の加谷珪一さんに、「アップル、EV開発計画を白紙」という話題について解説していただきます。

J.K. 巨額を投じてきたプロジェクトだけに衝撃は大きいですね。

加谷: アップルは10年前の2014年ごろ、乗用車開発に着手。巨費を投じて、開発を進めてきました。しかし、当初から開発が難航しているという話が取り沙汰されており、結局は撤退が決まりました。最大の理由は、他のアップル製品と同じくらいの利益を確保できないというものです。

J.K. 次世代の収益の柱としてEVが外れたということですね

加谷: 当初、アップルはテスラを競合メーカーと想定し、高級路線での販売を考えていました。しかし開発が遅れたことから、高級車路線ではテスラの立場が圧倒的となり、一方、中国メーカーのBYDが価格を抑えたEVの販売で急成長していることから、ミドルレンジの市場も難しくなってきました。アップルらしさを出すには高級路線の方がよいわけですが、まさにタイミングを逸した状況です。

J.K. トランプ政権誕生の可能性が高まると、ガソリン車回帰もありそうですね

加谷: もしトランプ氏が大統領になった場合、アメリカのEV化にブレーキがかかる可能性が出てきます。アップルは世界で製品を販売しているグローバル企業ですが、米企業ですから、その影響は大きいと言わざるを得ません。

J.K. 他の企業の動向はどうなっているのでしょうか?

加谷: 高級路線を打ち出し、他業種から新規参入したメーカーの中には、撤退するところが相次いでいます。掃除機で有名なダイソンも採算が合わないことなどからすでに撤退を決めました。もはやEVは特殊で高級品ではなく、普通の自動車メーカーが生産する、一般的な自動車になりつつあるのかもしれません。