第一生命経済研究所の藤代宏一さんに、解説していただきます

藤代:今朝は史上最高値を更新した日本株についてです。

J.K. 日経平均株価は昨日の終値が3万9166円19銭 、随分あがりましたね。

藤代: 1989年12月につけた38915円をようやく更新しました。当時と現在で何が違うかといえば「業績」です。当時の株価は明らかに行き過ぎていた一方、現在は業績に見合っています。株式の割高度合いを計測する、最も基本的な尺度としてPER(Price Earning Ratio)があります。一株当たり利益に対して株価がその何倍の水準にあるのかを示すもので、投資家の楽観度合いを示します。バブル当時はおよそ60-80倍だったのに対して現在はおよそ15-20倍ですから、およそ4倍の開きがあります。過去の最高値当時と同じくらい投資家が楽観的になっているとすれば、日経平均株価は今、およそ15~20万円という水準になっています。違いは明白です。

J.K. 企業収益は良くても、生活の実感が伴っていないという指摘もありますね。

藤代: 景気の感じ方は年代や立場によって人それぞれですので、私としては何とも言えませんが、ようやく賃金が上がり始めたことは重要です。2023年と2024年は大企業、中小企業ともに、賃上げが幅広く実施されて30年ぶりの上昇率でした。問題は、これが2025年以降も続くのかです。よくも悪くも企業はまだ資本を溜め込んでいて、利益を十分に還元していません。利益をどれだけ従業員に還元したかを示す、労働分配率という指標は、かなり下がっているので、賃上げの原資はまだ豊富だと言えます。

J.K. 賃上げの持続は明るいですね。またあの頃の熱狂が来るのでしょうか?

藤代: バブルというと、必ず出てくる映像はジュリアナ東京です。実のところ、ジュリアナ東京は株のバブル崩壊後の流行なんです。オープンは1991年、最盛期を迎えたのは92年と伝わっています。では92年の株価はというと、1.5万円を割れ。1989年の半分以下です。当時を生きた方々からすれば「バブル崩壊」という認識は乏しかったのでしょうが、バブルの象徴として人々が株価上昇に浮かれて扇子を振っていたというのは、事実関係が怪しいです。失われた30年と言われるくらいですから、記憶が曖昧になるくらい、株価の回復に時間を要したということです。