第一生命経済研究所の藤代宏一さんに、解説していただきます。

藤代:今年の日本経済、注目点についてです。

J.K.: 去年は、数字の上では景気が回復したようですが、今年はどうでしょうか?

藤代: 去年はコロナの落ち込みから回復する中、企業収益は好調で株価が1年で30%近い上昇を記録するという、まずまずの明るい1年だったと思います。賃金も基本給が約30年ぶりに2%程度上昇しました。しかし物価上昇率は食料品を中心に日銀の物価目標である2%を超えましたので、富裕層以外の方々にとって複雑な1年となりました。この賃金と物価については、今年状況は良くなるとみています。

J.K. 物価と賃金はどう変化していきそうですか?

藤代: まず物価については既に上昇率が相当鈍化しています。現時点で最新の消費者物価指数は、食料品の値上げが一服したことで、全体として2%を僅かに上回る程度まで落ち着いています。今後は政府のエネルギー関連の補助が終わることもあって、その部分について負担が増えますが、幸いなことに原油価格が落ち着いていますので、一気に負担が増える可能性は低いです。一方賃金は今年は去年を上回る上昇になりそうです。2年連続で1990年代半ばと同程度の伸びが予想されますので、賃金と物価のバランスは好転する可能性が高いです。そうした中で日銀はマイナス金利解除に踏み切ると思いますが、生活に与える影響は限定的だと思います。

J.K. 株価についてはどうでしょう?

藤代: 年末までに3.6万円まで上昇を見込んでいます。ここへ来て日本企業は危機感が強くなり、改革の成果が投資家に評価されつつあります。余分な現金を抱え込まず、従業員に還元したり、優秀な人材に適正な対価を支払ったり、或いは将来の収益機会に対して積極な投資を実行したりと、攻めの姿勢が見えてきました。この3.6万円という数値は現状から10%にも満たない上昇率ですが、企業の変革が予想以上に評価されれば、年末までに、1989年につけた約4万円が視界に入ってくるかもしれません。