第一生命経済研究所の藤代宏一さんに、解説していただきます。
藤代:日銀の金融政策について
J.K.: 今週の金融政策決定会合、おさらいするとどんな内容でしたか?
藤代: 短期の政策金利、つまり預金金利や変動型の住宅ローン金利に連動する金利h、マイナス0.1%で変更なし。他方、10年金利に関しては0%「程度」に据え置くという従来の方針は維持しつつも、その「程度」の幅について、これまで以上に曖昧にしました。従来は1%以下の水準に長期金利を厳格に抑え込みますと言ってきましたが、それを多少の上振れは放置するという方針に変わりました。
J.K.: 為替市場ではその後円安が進みました。日銀の金融政策との関係は?
藤代: 日銀が金利を引き上げる方向に動いたことそれ自体は、理論的には、円高要因です。現在為替市場の参加者は日米の金利差に着目しています。日本の金利が上がれば、日米の金利差が縮小し、円高・ドル安圧力となります。ただしここで改めて考えたいのは、米国が昨年来5%を超える短期金利の引き上げを実施して、長期金利は2%台だったものが、現在は5%程度。それに対して日本は、短期金利は相変わらずゼロ、長期金利は1%弱で推移。この一年でせいぜい0.5%程度の上昇です。この変動幅を考えた時、日本側の動きは極めて限定的ですから、日銀の力だけで円高を引き起こすのは無理があると思います。
J.K.: 日銀の政策はこのままで良いのでしょうか?
藤代: ここでなぜ日銀が金融緩和をしているのか考える必要があると思います。それは日本経済が弱く、賃金が上がらないからであって、逆に金融緩和をやめて金利を大幅に引き上げて日本経済が強くなるかと言えば、そんなことは考えられません。金利が上がれば、住宅ローンの返済は増えますし、企業の利払い負担が増加して、漸く明るい兆しがでてきた賃金もまた下を向いてしまう可能性もあります。株価も下がる可能性が高いですし、そもそも円高方向になるかもわかりません。円安を止めるには、日本経済が強さを取り戻す以外に選択肢はないと思います。円安の原因を、日銀の金融政策以外のところに求める発想が必要だと思います。