商品ジャーナリストの北村森さんに、生活経済の観点から解説していただきます。今朝は「場所貸し」の多様化についてお話をお伺いします。
J.K.: もともと「場所貸しビジネス」はいろいろな種類がありますよね。
北村: 「シェアリングエコノミー」といわれるもので、レンタル会議室とかスペース、駐車場など、貸し出しを専業とするところ業者から、空き時間を貸し出すという方向性で変化してきた。もともと自分が使っている駐車場を、使わない時に他に貸す、というパターンは近年盛んだが、所有しないで借りるというニーズと、所有してから貸し出して対価を得るというニーズが簡単にマッチできることが大きい。
J.K.: どんな例がありますか。
北村: 例えば「飲食店」。営業時間は一般的に限られた時間帯なのが普通。人手確保が難しい中、営業時間を延長するとかえってコストがかさむ。休業日や空き時間で店舗を貸し出せば、「小銭稼ぎ」になる。なので、本格営業へのステップとか、趣味の延長とかで料理人もパターンも全く違う限定営業の店舗が増えてきた。
J.K.: 確かにラーメン屋さんと居酒屋とかありますね。
北村: そして一般の住居も不在の時にそうした形で貸し出すことも出てきた。オープンキッチン、広めのダイニングテーブル、大型テレビの前に椅子とソファが並ぶお洒落なリビングダイニングが、広告やSNSの撮影会場に使われる、ということもある。ウェブ上で仲介する「スペースマーケット」で自宅の貸し出しを登録。貸し出し中は外出していなければならないが、貸し出しに伴う収入が月数万円になる例もある。
J.K.: 自宅を貸し出すというのには抵抗がないのでしょうか
北村: 特に若い世代には抵抗が少なく、片づいたリビングでキッチンもあれば、主婦や幼い子どもを抱えるママたちの集りなどのニーズもある。昨年度におよそ3800億円の市場は、今後10年で規模が10倍になる見込みも。トラブルが生じる恐れもあるとはいえ、こうした新しいビジネスというのは自浄作用を一定に働かせながら進化していく見ることもできそう。