第一生命経済研究所の藤代宏一さんに解説していただきます。

藤代:今朝はどうしてアメリカはじめ世界の物価が急に高く、日本が安くなったのか?

J.K. コロナ前まではアメリカに行ってもそれほど、物価が高い印象じゃなかったのに、特にこの1年くらいアメリカの物価が物凄く高くなりましたね?

藤代: 答えは、アメリカの物価上昇と円安が同時に発生したからです。アメリカの消費者物価指数は2020年1月を100とすると、直近の8月は118.2です。およそ2年半で2割弱も上がりました。同時進行で円安が進みました。USD/JPYは1ドル110円~100円くらいで推移していたのが直近145円くらい。30%強の円安です。現地価格が20%あがったところに、30%の円安が加わり1.5倍くらいになった形で、金価格もこれに連動しています。

J.K. その円安は、日銀の金融緩和が原因と言われますが、これからは?

藤代: はい。なぜ日銀が金融緩和をしているのかというと、それは日本経済が弱いからで、逆に金融緩和を止めて金利を大幅に引き上げて日本経済が強くなるかと言えば、はなはだ疑問です。こうして考えると、円安というのは日本経済の弱さの「結果」という結論にならざるを得ないと思われます。ただし、今年に入って日本経済は賃金が上がったこともあって、持ち直しの傾向が強まり、日銀の緩和政策が終わりに近づく状況になってきました。

J.K. マイナス金利政策が終わり、為替も円高になるという方向ですか?

藤代: 年内にもマイナス金利撤回に動く可能性。これが俄かに現実味を帯びています。先日読売新聞のインタビューで、植田総裁は確信犯的に口を滑らせて年内マイナス金利撤廃、0.1%の利上げの可能性に言及しました。ただそれで円高になるかと言えば、また別問題です。米国が1年半で5.5%金利を引き上げたのに対して、日銀はようやく0.1%です。金利水準から為替を考えると潮目が変わるかは微妙。安いニッポンから抜け出すには、AI、電気自動車など、次世代の技術で猛追する必要があります。