第一生命経済研究所の藤代宏一さんに、解説していただきます。
藤代:アメリカで変化が激しい銀行について
ハリー : 一部の銀行破綻のニュースもありますが、個人的にはアップルが銀行業に参入。預金金利が4%、という事実に関心があります。
藤代: 異業種から銀行への参入というのは、実は珍しいことではなく、日本でもよくあることです。今回話題となっているのは預金金利。4%強とのことです。日本の常識からすると物凄く高い金利ですが、アメリカ中央銀行にあたるFRBが利上げを進めた結果、現在の政策金利は5.25%。それなので、実のところそれほど高い金利という訳ではありません。
ハリー : とはいえ、4%なら預金に回したいという人が多いのではないですか?
藤代: その通りです。こうした高金利の預金、景気を悪くさせる作用があるので、この動きは要注意です。預金者からすると銀行に置いておくだけで4%の利回りですから、とても好都合に思えます。ただ、冷静に考えてみると、消費者が自分の余裕資金を銀行に預けておくということは、その分だけ個人消費が減ることを意味します。これは金融引き締め、つまりFRBが政策金利を高めに維持する時にみられる典型的な消費者行動です。この状態が長く続くとアメリカ経済は減速に向かい、世界経済の波乱に繋がる可能性が否定できません。
ハリー :預金金利が高くなるというのは必ずしも良いことばかりではないのですね?そして日本への影響はどうなるのかが気になります。
藤代: 幸か不幸か、日本では4月に日銀総裁に就任した植田総裁が金融緩和を長期にわたって維持する方針を示しました。そこですぐにマイナス金利政策が終わる可能性は低くなりました。預金金利は当分の間、事実上ゼロ、となりそうですが、それは「預金をする意味がない状態」が暫く続くことを意味します。良くも悪くも預金金利が高くて、その結果として消費が停滞するという可能性は低そうです。