藤代:今週金融市場を騒がせた欧米で銀行の破綻、経営不安について

J.K. そもそもコロナから世界の経済が回復している中でなぜでしょう?

藤代: つい先週までアメリカ中央銀行のFRBは、景気とインフレの過熱を抑えることに躍起になっていました。この急変を理解するには、銀行が破綻する仕組みを理解する必要があります。通常貸出先の経営が不安定になって、貸付金が回収できない、いわゆる不良債権問題によって、銀行自体の体力が低下して破綻に至る、というものです。ただし今回は貸出先の一般事業会社で大型破綻は起きていませんので、やや例外的です。

J.K. でそれはなぜ銀行経営は苦しくなったんですか?しかも急に。

藤代: 銀行が稼ぐ仕組みの「長短金利差」という言葉を理解する必要があります。通常、金利は貸出(満期)までの期間が長いほど高くなります。銀行では、満期の短い/無い、普通預金という形で預金者からおカネを集め、それを満期の長いに貸出に変え、「利ザヤ」を稼ぎます。日本の具体例では、現在ほぼ0%の預金金利で集めたおカネを、一例として10年固定の住宅ローンの1%程度で貸出、その差が利益になります。この長短金利差で稼ぐ仕組みが「欧米」で崩壊してしまっています。

J.K. 「欧米」で崩壊というのはどんな事情でしょう?そして先行きは?

藤代: 利上げです。例えばアメリカ中央銀行は、インフレを抑えるために1年で5%ほど短期金利を引上げています。一方で10年もの金利は4%以下。短期金利の方が高い。そうすると銀行収益は悪化する。そして投資家は株を売る、株価が下落する、それを見て不安に思った預金者は、預金を引き出す、この流れが起きつつあります。もちろん利上げだけが原因ではありませんが、中央銀行が急速な利上げをすると、リスク管理の甘い企業があぶり出されるという傾向があります。景気が過熱すると、その反動がやって来ます。日本のバブル崩壊、リーマンショックも似た構図です。今回どうなるかはわかりませんが、現在のところ欧米の金融当局は、迅速な対応によって危機を封じ込めています。