第一生命経済研究所の藤代宏一さんに解説していただきます。

藤代:金融政策(国債金利)と住宅ローンがどう結びついているかです。

J.K.: 住宅ローンといえば、アメリカのローン金利があがっているようですね。

藤代: 今年初めはアメリカの期間30年の金利、3%台だったものが、FRBの金融引き締めによって最近は7%。単純に支払い金利が倍以上になるのでアメリカでは住宅販売件数が顕著に減っています。ここで重要なのは。アメリカで「住宅ローン」という場合、それは「固定金利」です。つまり起きているのは新規で住宅ローンを借り入れる人に適用される金利が7%に上がった一方、既にローン契約を支払う人に直接的な影響はありません。ローン金利上昇と聞くと、かつてサブプライムローンを思い出す方も多いかもしれませんが、全米でローンの支払いが滞って経済が大混乱に陥る可能性は低いと思います。

J.K.: 日銀は金融緩和を維持。利上げは?そして住宅ローンはどうなりますか?

藤代: 日本は欧米のように10%近いインフレに直面していないので、日銀は景気刺激を優先して金融緩和を維持しています。他方、円安を止めるために利上げをするべきという声もあります。日銀がなぜそうしないかと言えば、利上げによるマイナス影響を考慮しているからです。最も身近なモノは、住宅ローン金利です。日本は住宅ローンと言えば「変動」が主流です。日銀の推計によると残高ベースでの7割が変動金利型なので、日銀が利上げをするとローンの支払いが増える世帯が増加し、その結果として消費が減ってしまうリスクがあります。

J.K.: 円安対策で利上げをするとローン金利が増える、ということですね?

藤代: 仮に日銀が利上げをしたら、報道は連日のようにその影響を報じるでしょうから、住宅ローンを抱える人は「繰り上げ返済」を検討すると思います。繰り上げ返済をするということは、いまある貯金を切り崩したり、出費を押さえたりするので、その分消費に下押し圧力がかかるのは当然です。そうなると日銀の利上げによるマイナス影響が出てくるので幅広い視点で考えていくことが重要だと思います。