第一生命経済研究所の藤代宏一さんに通貨ユーロの下落について解説していただきます。

J.K. ヨーロッパ諸国で利用されているユーロ。アメリカドルと同じ水準ですね?

藤代: 対ドルでユーロ安が進行していて、一時1ユーロが1ドル割れとなりました。およそ20年ぶりのドル高・ユーロ安です。去年は1ユーロが1.2ドルだったので、今年に入ってから2割ほどEURが安くなりました。ちなみにこの間、円も安くなっていますので、円とユーロの交換レートでは、さほど大きな変化はありません。

J.K. では、ユーロがドルに対して安くなった理由はなんですか?

藤代: ユーロが下がったというより、ドルが上がったと理解した方が良さそうです。この間、EURの金利をコントロールする欧州中央銀行ECBは、マイナス金利の撤回に向けて政策金利を引き上げに動いていますが、それを遥かに上回る勢いでアメリカ(FRB)が金利を引き上げています。ドルの翌日物金利、年初の段階で事実上0%だったものが年末には3.5%になると予想されています。これがドル高・ユーロ安の大きな理由です。このユーロ安という事実を知っておくことは、現在の日本で議論されている通貨安(円安)を考える際、とても重要なポイントです。

J.K. 円安が物価高に拍車をかけるので、円安の是非を問う声はありますね

藤代: 日銀が金融緩和を修正して円安を止めるべきだという声もあります。ただ、利上げをしているユーロでさえこれほど通貨安が進んでいる現状を考えると、日銀が利上げしたところで通貨安が止まるかといえば、かなり疑問です。物価上昇が大変なので円安を止めろという意見はその通りかもしれませんが、為替は日本の政策だけでは自由にコントロールできないので、物価高を巡っては、今後も為替以外のところで政策を工夫する必要があると思います。