今週は商品ジャーナリストの北村森さんに、最近時々街角で見かける「持ち帰り餃子の無人店舗」について解説していただきます。回線が繋がっています。

J.K. 無人餃子販売店はいつごろからはじまり、現在どんな状況なのですか?

北村: 現在400店近くを展開する無人餃子販売店の先陣を切った企業は、実はコロナ禍の前に登場し、2019年には一号店を東京都内に出店。ブームの根底には、コロナ禍で経営環境が厳しくなった飲食関連企業の新展開と、もう1つビジネスモデルに目をつけた異業種からの参入がある。前者は「自分たちの餃子の味を広める」という思いで、後者は「全国各地のご当地餃子をひとつの無人店舗に集結させる」といった趣向だ。

J.K. 無人店舗であることでの工夫や価格設定はどうでしょうか?

北村: 36個入りで1000円、というように、キリのいい値段にするケースが多い。というのは、多くの餃子無人販売店では、券売機やキャッシュレス決済の仕組みを取っていない。冷凍ケースから餃子を取り出して、代金を店内にある箱に入れるというだけの、シンプルな方法で釣銭やレジ管理不要にしている。意外と万引きが少ないと各事業者は口をそろえている。監視カメラの存在もあるだろうが、ほとんどの消費者は誠実だと思える。1000円は、決して安い価格設定ではないが、36個入りだと、家族でちょうど食べきれる数だけに、値段がネックにはなっていない印象。

J.K. なぜここまでブームになったのでしょう?

北村: コロナ禍が続く中で既存の飲食業への逆風をどう打開するか、しかも、コストはそうかけられない状況下でどんな手があるか。テナントオーナーにしてみれば商店街などに空き店舗が生まれる中でそこをどう埋めるか。また消費者にすれば、人との接触を避けたい状況のもとで、どう買い物するか。新しい業態である餃子の無人店舗を体験してみたい、という欲求もあり、「すべての要素が噛み合った」という表現はできそう。

J.K.: 今後の展開はどうなりそうでしょうか?

北村: 今やひとつの町に2つも3つも餃子の無人販売店がひしめくケースもあり、ここから先に淘汰されるケースも出てくるだろう。ただ、出店する側はそれも織り込み済みなはず。低コストで出店できるだけに、当面は「未開のエリア」への出店が続くとも言えそう。ここまで「どこでも、いつでも」餃子が買える環境になると、餃子消費の勢力図が変わるかもしれない。長年日本一を争う浜松、宇都宮、あるいは千葉といった都市はどきどきしているかも...。そして無人店舗を成功させた事例は、古着や古本の例がある。どちらも都内で注目を集めていて、今後も餃子以外の商品分野で、無人店舗は扱う商品を変えて勢力を伸ばすのではないか。